×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
▽地味にこちらの尾形妹中編の転生後のお話ですが、「前世でも今世でも尾形の妹」ということだけわかれば多分読まなくても大丈夫だと思います。











『ただい………ま?』

 名前が仕事から帰宅すると、玄関前には兄がいた。しかしただの兄じゃない。軍人のような服を着て、名前に向かって銃を突きつけていたのだ。

「…おい、俺をここに連れて来たのはお前か?何がもくて、」
『お兄ちゃん、何してるの?』
「………は、」

 名前にお兄ちゃんと呼ばれた男、尾形はぽかんとしながらも目の前の女の顔をよく見た。

「……………名前?」

 女の顔は自分が愛する妹そっくりだったのだ。髪型や服装などは違えど、顔立ちははっきり自分の妹だと言えよう。二十年以上も見続けて来た最愛の妹だ、見間違えようがない。

『どうしたの?今日来るって言ってたっけ?なんか変な服着てるし…会社の飲み会で出し物でもやらされた?お兄ちゃんそういうの一番嫌いなのにねぇ』

 そう言うと名前は未だに呆然とする尾形の横をすり抜け、自身の家に入った。ハッとした尾形が慌てて名前の後を追うと、自分が最初に目覚めた部屋に入った。

 その日の尾形はいつものように杉元たちと野宿をし、目が覚めるといつの間にかここにいた。まさか寝てるとは言えど自分が気づかないうちに見知らぬところへ連れられていようとは。大きくて薄い四角い箱や、壁の上についている白くてこれまた四角い箱など、尾形が今まで生きてきて見たことのない物で溢れかえっている部屋だった。不思議な開き方をする扉を四苦八苦しながらも開けると、ちょうど誰かがこの家に近づいて来る気配がした。きっとその人物こそが自分をここに連れて来た奴に違いない、そう思った尾形は持っていた銃を構えた(この時、なぜ犯人は銃を奪わなかったのかと疑問を覚えた)。そして冒頭に戻る。

『お兄ちゃんいつもは私の家に来る時はちゃんと連絡してたのに、今日は珍しいねー。ご飯も私の分しか買ってないけど、夕飯食べて来た?食べてないならカップ麺くらいならあるよ』

 名前は言いながらスーツから部屋着に着替える。目の前にいるのは自分の兄だし、どうせいつものことだ。そう思ってどんどん服を脱いでいく。これに驚いたのは尾形だ。猫目の黒目部分を縦に細長くした。自分の妹(なのかはわからないが完全に似ている女)が目の前で急に服を脱ぎ出したのだ。尾形の中の名前は兄にも滅多に肌を見せることはなく、人がいるにも関わらず服を脱ぐような妹ではなかった。

「……………」

 しかしそれを注意するでもなく、視線をそらすでもなく、尾形はじっと見続けた。

『それにしてもキマってるねーそのコスプレ、銃もまるで本物みたい』
「こす……?」
『ちょっと持ってみてもいい?』
「、おい」
『すごいッおもーい!』

 尾形が持っていた銃を名前がその手から奪うと、その重さにひどく感激した。こういうレプリカは大抵軽いものだとばかり思っていた名前は、ずっしりとしたその重厚感を存分に味わった。

 一方もともと妹に優しく、"良い兄"だった尾形は妹のお願いには滅法弱かったので、銃を持とうとして来る妹を無理やり退けることはできなかった。特に尾形を動揺させたのは、かなり押しの強い妹(なのかはわからないがやはりそっくり)だった。自分の妹は「兄様」「兄様」と兄をよく慕い、謙虚だが芯は強くて柔らかい笑みを浮かべるような可愛らしい妹だった。しかし今尾形の前にいる妹は━━━、

『お兄ちゃんなんかちょっと老けた?』

 違う。俺の妹はこんなことを言わない。やはりこの女は妹に似ているだけで、全くの別人だ。最愛の妹にそっくりだなんて、なんて腹立たしい。尾形は名前が持っていた銃を奪い返すと、ボトルに手をかけた。

『最近仕事忙しそうだし、無理しないでね…お兄ちゃんが倒れたりしたら、私嫌だから…』

 …あれ、やっぱり妹?尾形は銃を下ろした。

 それから名前が出してくれた「カップ麺」なるものを食べた尾形は、その美味しさにしばらく感動していた。














明治を生きた尾形兄妹は現代に転生しているが、お互いにその時の記憶はない。そんな転生した妹の元に明治時代の尾形兄がやって来ちゃったお話。