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▽学パロです
▽鯉登くんがめっちゃ似非薩摩弁です






『あ、鯉登くんおはよー』
「……おう、おはよう」

 私の隣の席の鯉登くんは鹿児島からやってきた薩摩隼人である。褐色の肌は健康的で、シュッとした顔立ちやスタイルから女の子からの人気も高い。そんな鯉登くんと私はただのクラスメイトで、隣の席だからって早々話すことはない。朝の挨拶や、授業で必要な時くらいだ。

「…何読んじょっと?」

 そんな鯉登くんはバリバリ薩摩弁で話すので、たまに何を言っているかわからない時がある。まあそもそもそんなに話すこともないので、本当に稀なことなのだが。でもこれくらいはわかる、"何を読んでいるのか"を聞いているのだ。私が今読んでいる本が気になっているようなのだが、鯉登くんにこんなふうに話しかけられたのは初めてだったので少し驚いた。

『これ?私が好きな作家さんの新刊なんだ。ずっと楽しみにしてたから少しでも時間があると読んじゃって』
「……ほーん」

 鯉登くんは私の隣にある自分の席に座りながら、私の手元を凝視していた。何を見てるんだろ…本?そんなに気になるのかな。

『……よかったら読む?私が読み終わった後になっちゃうけど…』
「キエッ!」

 キエッ?キエッてなんだろう。気になって鯉登くんを見てみるも、彼は両手で口を強く押さえて頷くばかりだった。

『えっと…とりあえず読むってことでいい?』

 鯉登くんはブンブン頷いた。あまりの勢いでこちらに風を感じてしまったほどだ。鯉登くんは朝から元気だなぁ。私は鯉登くんとのおしゃべりをやめて本に集中することにした。そんなに鯉登くんと話すことないし、鯉登くんもそんなに親しくない女の子から話しかけられても迷惑だろうし。私が本を読む横で鯉登くんは机をバリバリしていたけどあれは何か意味があるのかな?

 それから授業を受け(お互いの小テストを交換して採点する時、何故か鯉登くんはひどく緊張していた)(あと落としてしまった教科書を拾ってあげた後の鯉登くんの音読は、早口の薩摩弁で何を言っているかわからなかった)、放課後になった。私は特に部活にも所属していないので、いつもそのまますぐ帰ることがほとんどだった。今日も今日とていつも通りそのまま帰ろうかという時、隣の席の鯉登くんが勢いよく立ち上がった。何部だったかは忘れたが、確か彼は運動部に所属していなかったっけ?だったら早く部活に行かなくていいのかな?

「ああああああの…、名字さん……」
『なに?』

 エナメルバックを持っているし、そのまま部活に行くのだろうと思っていた鯉登くんから話しかけられた。鯉登くんから授業とか関係なくこんなに話しかけられるなんて、今日は何かあったのだろうか。

「きょ、今日は急に本んこつ聞いたり…教科書落としたん拾うてもろうたどん、お礼も言わんでごめんな…」

 見るからにシュンとした鯉登くん。こんな鯉登くんを見るのは初めてだ。シュンと俯いてもまだまだ目線が合わないほど私よりも背が高い。普段から真面目で頭が良く、運動もできる鯉登くんが先生から怒られるということが滅多にないので、落ち込む鯉登くんはかなりレアだ。あ、でもこの前たまたま鶴見先生に叱られてる鯉登くんを見てしまった。鯉登くんが鶴見先生をかなり敬愛していることは私も知っていたので、怒られてかなり落ち込んでいてちょっと可哀想だなって思ったのを覚えている。

『ううん、気にしてないから大丈夫だよ』

 その鶴見先生に叱られていた時並みに落ち込む鯉登くんを責めることなんて出来ないし、もともと全然私は気にしていなかったので鯉登くんがそんなに落ち込む必要はない。
 
「き、気にしちょらん……!?!?つまりおいんこつはそげん眼中になかし、話しかけたことすらも気にされちょらんのか…!?」
『え?なんて?』

 鯉登くんの早口薩摩弁はやはり聞き取ることができない。ずっと聞いてたら聞き取れるようになるのかな?でもそんなに鯉登くんとおしゃべりするとも思えないしなぁ。頭を抱えてしまった鯉登くんにもう私の言葉は聞こえていないようで、キエエエッと猿叫しながらどこかへ走り去ってしまった。相変わらず鯉登くんは足が速い。それに廊下にいる人たちをひょいひょい避けて行くことも合わせてすごい。

『うーん、鯉登くんは面白いなぁ』

 隣の席の鯉登くんは、いつも表情がコロコロ変わって面白い人だ。見ていて全く飽きないので、まだまだ席替えはしたくないなぁ。







「月島ァ!!!今日はあの隣の席の名字さんと…ハァハァ……たくさん話してしもたアアァァ!!ハァ…ハァ……こ、これで少しは親しゅうなれたじゃろうか……!!」
「まず落ち着いてください」