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 同じクラスの鯉登音之進くんと体育祭で二人三脚をすることになってしまった。鯉登くんは学年、いや学校全体で見ても屈指の俊足の持ち主で運動部。対する私は、運動音痴でただの帰宅部。どうしてこんなことになったんだろう…なんでペアをくじ引きで決めたんだ体育祭実行委員。

『あ、あの…鯉登くん……私めっちゃ足遅いから足引っ張ったらごめんね…』

 ここは先手必勝、先に謝っておこう。もう最悪二人三脚じゃなくて私を引きずってゴールしてもいいからね鯉登くん、その覚悟はできたよ。

「……だったら二人で練習でもするか」
『え?』
「二人三脚はお互いの呼吸を合わせることが大事だろう。だったら練習あるのみだ」
『でも鯉登くん部活あるでしょ?』
「体育祭期間中は体育祭の練習に行ってもいいと鶴見先生にも言われている、気にするな」

 こ、鯉登くん優しい…!同じクラスだけど全然話したことなくて、その見た目と言動から勝手にちょっと怖い人なのかと思ってた…ごめんね鯉登くん……。

『うん…うん!私頑張るよ!練習して一緒に一位目指そう!!』
「お、おう…やる気があるのはいいことだ」

 突然拳を握ってやる気を出した私に、引きながらも褒めてくれる鯉登くんはやっぱりいい人だ。体育祭なんて運動音痴の私からしたら最悪なイベントだけど、鯉登くんの知らなかった一面を知ることができたので体育祭にちょっと感謝した。

 そしてその日から私たちは体育祭に向けて、二人三脚の練習を始めた。

「布、きつくないか?」
『大丈夫、むしろもっとぎゅっと強くやっちゃって!』
「お?おうわかった」

 グラウンドに来てからもとんでもないやる気を見せる私に、鯉登くんはちょっとよくわからないがまあいいかと言ったような顔をしつつ私の左足と鯉登くんの右足をぎゅっと強く縛った。鯉登くん力強いね。

「じゃあ縛った足の方から行くぞ、せーの」
『いっちに、いっちに……』
「おお、名字なかなかいいぞ」
『えへへ、鯉登くんのおかげだよ』

 本当に鯉登くんのおかげだと思う。だって今全然スピード出てないし。鯉登くん私に合わせてくれてるんだな……優しい。

「いっちに、いっちに、ここら辺で一回カーブしてみるか」
『うん、いっちに、いっちに…、あっ』

 カーブに差し掛かった時、自分の足と足がぶつかって体が前にぐらりと傾いてしまった。このままでは鯉登くんも巻き込んで転んでしまう、ごめん鯉登くん…!やっぱり私は鈍臭い運動音痴だったよ…!

ポスン、

「…おい、大丈夫か」
『あ、あれ…転んでない……?』

 地面の衝撃に備えて強く瞑っていた目をゆっくり開ける。すると目の前には凛々しい眉毛が特徴的な鯉登くんの顔が。え?顔?

「自分の足に躓く奴があるか。しっかりしろ」
『あ、え、ご…めん』

 どうやら私は転ぶ前に鯉登くんに受け止めてもらえてたようだ。その証拠に、組んでいた肩がしっかり捕まえられて引き寄せられている。鯉登くん体幹もすごいんだね。

『鯉登くんありがとう……そろそろ離してもらってもいいかな…?』
「む、すまない」

 謝りながらも鯉登くんは私の体を離さない。え、じゃあ今の何に対する謝罪?

『あのぉ?鯉登くん…?』
「お前は離すとすぐ転んでしまうようだ。俺が側にいなければ」

 私は赤ちゃんか何か?今転んだのもこうして鯉登くんと片足が繋がれていて、二人三脚の練習をしていたからなんだけど………

「よし、練習を続けるぞ」

 鯉登くんはそのまますっくと立ち上がった。自然と私の体も持ち上がる。その勢いでグラッと体が傾くが、鯉登くんの強い力で再び引き寄せられた。ぅゎっょぃ。

『こここ鯉登くん二人三脚の練習にしては近くない!?これじゃ上手く走れないと思うんだけど!』
「俺がいれば大丈夫だ。名字は心配するな、俺が守ってやる」

 絶対大丈夫じゃない!心配!なんか怖いって鯉登くん!何から守るの!?

 それから案の定ろくな練習はできなかった。というか私が転びそうになっても鯉登くんが強すぎて特に支障はなかったので練習いらないんじゃないかな。まあ鯉登くんの一存で毎日放課後練習はしてたけど。私はほとんど足をそれっぽく動かすだけでなんとかなっていた。もう全部鯉登くんだけでいいんじゃないかな。



 体育祭後も…

「名前!大丈夫か?全く…お前は相変わらず俺がいないと本当にダメだな…」

 なぜか私の周りによく鯉登くんが出没するようになった。どこから来たの?俊足をそんなことに使わなくても。私転びそうにもなってないのになんで肩を抱くの?あとここ女子更衣室の前だけど大丈夫?いつから名前で呼ばれ始めたかはもう忘れちゃった。

「これからも俺がずっと側で名前を見てやるから安心しろ、離すことはない」

 さらに強くグッと肩を抱かれた。キリッとした顔がかっこいいね鯉登くん。優しさもここまでくると怖いよ鯉登くん。最近学校外でも視線を感じるんだけどそんなまさか違うよね?鯉登くん