ch1.黒髪の兄弟




新しく銃弾を装填するルカ。まさかR生物が進化してしまうとは思わなかった。いや、進化させてしまうとは思わなかった。この任務が始まった時にリーダーが言っていたような雑魚を相手にするのとはかなり都合が違い、余計に気を付けなければならない。大迷惑な第二幕の始まりだ。

「ここに居ろ」

低く呟くと、向けられる殺気に恐怖で固まったルイドが頷くのを確認もせずに、ルカは地を蹴って一気にR生物までの距離を詰める。ルカは右手に握る短銃を左手に持ち替え、空いた右手で剣を抜いた。接近戦で殺すしかないと判断してのことだった。依然変わらず、剥き出しのままのコアを破壊すれば一撃で勝利できる。ただし、先程よりも数段に破壊力とスピードの上がったR生物の触手の、ありえないほど少ない隙をつけたらの話だが、ここまできてしまった以上やるしかない。

R生物に近付くと、二本の触手がルカに襲い掛かった。上空から叩きつけるようにしなりながら降ってくる攻撃から、ルカは地を転がって回避した。そのままの勢いで回る頭に叱咤しながら起き上がり、駆け出す。ルカの背後では、地面が大きくえぐられるような破裂音が響いていた。
さらに休むこともなく別の二本が横からルカに襲い掛かってきた。左側から襲ってきた触手をとっさに左手に握っていた銃で打ち抜き、右側から襲ってきた触手を刀身で受ける。やわらかい触手は、いとも容易くスッパリと切断された。触手を斬った瞬間、気持ちの悪い音と感触を全身で感じた時には、ルカの体はR生物の血のシャワーを浴びていた。幾分か低くなったR生物の断末魔の叫び声が、ルカの周囲の空気を震わせる。

そこに出来た一瞬の隙。これを逃すまいとばかりに、ルカはR生物の懐に飛び込んだ。潜んでいた残り二本の触手のうち、斜め左前方で蠢いていた一本に照準を定めると、痺れる左腕に耐えて二・三発と撃ち込んだ。不意に受けた衝撃に驚き、ほとんど反射的に右側から襲ってきた最後の触手を、体を滑らせるように地面に寝転ばせて回避し、下から剣で一気にぶった切る。ルカは再び不快なシャワーを浴びることを覚悟しながら、歯を食いしばった。

さらに質量を増したR生物の断末魔の叫び声に、鼓膜がどうにかなってしまったかのような気分を感じながら、ルカは起き上がった。血濡れの剣を捨て、銃を右手に持ち直して一気に目前のコアを撃ち抜く。
ビシリ、という音と共にコアにひびが入る。そのひび割れの中心を見定めると、ルカは止めの一発を撃ち込もうと引き金を引いた。その瞬間に大きくしなった、最初に交わした初撃の触手の強烈な一撃がルカの胴体を吹っ飛ばす。大きく吹き飛ばされたルカが痛みに耐えながら顔を起こす。コアが破壊されたR生物が、小さく鳴きながら霧散するように消失していくのが見えた。

「……任務、終了」

ああ、ようやく終わった。ルカは起こしていた顔を落とし、仰向けになるように寝返りを打ちながら作戦の終了を告げた。もうたくさんだ。R生物の最後屁の痛みに耐えながら、ルカは大きく溜め息を吐かずにはいられなかった。





前へ / 次へ


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -