ch1.黒髪の兄弟





予想外。その一言が今のルカの表情を端的に表していた。
ルカは一瞬、なかなか止めを刺そうとしないルカに痺れを切らしたアルフォンソが飛び出してきたのかと思ったが、そうではなかった。

少年は変声期前と思われる少年声で雄叫びを上げながら、果敢にもその両手で掴んでいる銀の斧で苦しげに暴れるR生物の触手を一本、斬りおとした。斧を握るのではなく、掴むと形容するに相応しいほどに危なっかしい様子の少年だった。R生物の断末魔の叫びが、再び響く。

激しく暴れまわっていた触手の動きが、鈍くなっていた。そんなR生物の様子に、ルカは再び集中力を取り戻す。
あの少年が何者かは知らないが、この機会を逃す手はないだろう。そう思ってルカは銃を構え、R生物の閉じきった目に照準を合わせて引き金を引く。
三・四発打ったところで、R生物の体にうっすらと球体が浮き出てきた。R生物の心臓でもあるコアだ。

ルカはホルダーに短銃をしまい、代わりに差してあった剣を抜いた。そして、R生物のコアを破壊するために距離を詰めるべく、一気に駆け出した。斧で触手を斬りおとしていく少年の脇をすり抜け、波打つ触手の間を縫っていき、コアの元へとたどり着く寸前という、まさにその時だった。

瞬間、突如としてR生物の目が大きく開かれた。耳を塞ぎたくなるような雄叫びを上げ、R生物はその赤い目から赤黒い血をダラリと流す。
その光景を見て、斧を振りかざして触手を斬りおとしていた少年の体が硬直するのを背後に感じた。R生物の雄叫びに、気圧されたのだろう。不意に嫌な予感がよぎり、ルカは少年を振り返った。

少年を叩き潰すかのように振り上げられた触手。動こうとしない、いや、動けないでいる少年の姿を捉え、ルカはマズイと思った。そして、そう思った瞬間には少年の体に向かって飛び出し、少年の左腕を掴んで思い切り投げ飛ばした。振り下ろされた触手は、ちょうどルカが勢いで倒れこんだ場所のすぐ右側で地面をえぐる。
ルカの右頬が、少しだけ切れてルカは息を呑んだ。すぐさま転がるようにして体を起こし、ルカは安堵の息をつく。








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