ch1.黒髪の兄弟




降下する体が風を感じながら、空気の間を引き裂くように落ちてゆく。ルカは着地のタイミングを見計らって神経を集中させた。着地の瞬間、体を丸めて上手く受身をとることに成功し、しばらく地面に伏せたままの状態でR生物の様子を伺った。赤い異形の生物の不気味な赤く充血した目は、遠くをさまようように視線を泳がしていた。ギィギィと鳴き声を発しているが、その声はどこか切なげで、幼さを思わせた。

おそらく落下の衝撃でまだ頭が混乱しているのだろう。やはり奇襲して一撃で仕留めるべきだ。
今がチャンスだと判断したルカは伏せた状態のまま、ベルトの辺りを探った。カチャリ、と音がして冷たいものに指があたる感触。武器である愛用の短銃だ。ルカは慎重にそれを顔の前で構える。どこを狙うかなんて、答えは分かりきっていた。大きな充血した赤い目に照準を合わせる。そして、覚悟を決めて一気にトリガーを引いた。

響き渡るR生物の金切り声。暴れまわる無数の触手。サイレンサー付きの独特の発砲音、そして硝煙の臭い。それらを感じた瞬間にはすでにルカは追加で四・五発と撃ちこんでいた。充血した目が完全に閉じきり、闇雲に触手が振り回される。断末魔の叫びがルカの鼓膜に突き刺さるが、少年は気にならないかのように懐から取り出した新たな銃弾をリボルバーに詰めていく。
触手が邪魔で、さらに撃ち込めそうにはなかった。しばらく様子を見るしかないかな。

「奇襲したからには、速攻で仕留めなよ。何が起こるか分からないうちは、絶対気を抜くな。分かったね、ルカ?」

ふと、ルカの脳内で赤髪の女幹部の言葉が聞こえた気がした。確かに、そう戦闘のプロである彼女は言っていたが、こういう場合の様子見はどうなんだろうか。突っ込んでいくのは得策ではないだろうが、あのR生物がそのまま死ぬのを待っていても本当に大丈夫なんだろうか。
……つまり、R生物は本当に致命傷を負っているのか。あるいは自己回復能力があるのではなかろうか。そこまで考えて、ルカは舌打ちをした。油断は出来ない、ならば敵が弱っている今、すぐにでも止めを刺すべきだろう。
そこまで考えてルカが立ち上がった瞬間に、ルカが全く予想しなかった事が起きた。

両手で掴むようにして斧を持った黒髪の少年が、茂みの中から飛び出してきたのだ。







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