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あの後、余韻を覚ますように暫く柵に寄りかかって外を眺めていると、マクガイアさんがどこからか戻ってくるのが視界に入った。

パーティー会場の周りと言えど、1人でこんな夜中に出歩くなんて危ない。

「マクガイアさ…」
「こんばんは〜」
「!!」

マクガイアさんに声をかけようとすると、頭上からの愉しそうな声に遮られた。

「キッシュ…!」
「パーティーの余興にちょっと面白いことしてみよっか」
「こんな日にまであんたに付き合ってらんないっての!」
「ヘヘッ、ホントに名前はつれないんだか、らッ!」

キッシュはマクガイアさんに手を翳すとマクガイアさんは苦しみ、彼女の体内から光るなにかが抜け出てくると、力尽きるように倒れた。

その光るものはキッシュの手中に収まり、そして弾けるように光は消え、結晶が現れた。
反対の手にはパラパラを持っている。

「適性のある人間のスピリッツとコイツをくっつけると、こーんなのが作れちゃうのさ」
「ちょっと、まさか…」
「フュージョン!!!」

止める間もなく合わされたそれは眩い光を放ち、キッシュの笑い声とピアノの狂ったような不協和音が響いた。

「どお?イケてるでしょ?」

その声に目を開けるとピアノを首から下げた、女性のカタチをした豹だか豹のカタチをした女性だか、なんとも形容し難いモノがキッシュの後ろに浮いていた。

───人間のキメラアニマ…ちゃんとフラグは回収してしまったってワケね。

マシャが皆を呼びに行くのを尻目に、キッシュの出方を伺う。
いつものようにニヤリと笑みを深めたキッシュはいつもより低い声でキメラアニマに指示を出した。


「さあ、戦ってみな」


雄叫びをあげて襲い掛かってくるキメラアニマを地上に飛び降りることで回避し、向き直る。

そこでみんととれたすが駆けつけて来てくれた。
敵に対峙する2人にキメラアニマがマクガイアさんである事を手短に告げると、ひどく驚愕しつつも、早急に事を終えようとすぐさま変身した。

「「「地球の未来に!」」」
「ご奉仕するにゃん!」

全員でお決まりのセリフを言う。そんな場合じゃないってのにこの体と口は勝手に動く。ちくしょう、いつか主導権握ってやる。

「おやおや面白いね、いい余興だ。──潰しちゃいな」

ピアーノと叫びながら電光石火のごとく、目に見えないほど素早い動きで突っ込んでくるキメラアニマに踊らされ、目が回ってしまいそうだ。

同じネコ科なのにスペックがちがすぎる…!!

弄ばれる私達を見て何を思ったのか、黙って愉しそうに傍観してたキッシュが唐突に口を開いた。

「これがディープブルーの意志だ。悪く思わないでくれよ」
「っ!ディープブルー…!!」

この世界で初めて耳にした黒幕の名に、つい動きが止まる。

こんな仲間が揃っていない序盤にその名前が出るなんて…!

他の誰もがその名に疑問符を浮かべる中、ニヒルな笑みを浮かべたキッシュと目が合った。

「…おやおや」
「っ!」

その意味ありげな笑みにツーッと冷や汗が背を伝うも、レタスの呼ぶ声に我に返り目前の敵に集中する。

今はコイツをどうにかしなくちゃ──!


「でも、今までのキメラアニマと違すぎる…!」
「わたくしが行きますわ!」


ミントがミントアローで攻撃をするも、容易くかわされる。
次は私が!と一歩前に出たレタスがレタスタネットで技を繰り出すも、またもかわされた。

キメラアニマがピアノを奏でる────奏でるなんてもんじゃない、滅茶苦茶に弾き始めるとどういうわけか風が吹き荒れ、気を抜くとすぐに吹き飛ばされてしまいそうだ。向い風が強すぎてうまく呼吸もできず、息が苦しい。

「ッ!ミント!レタス!」

ドサッという音が聞こえ、振り返ると、ミントもレタスも強風に耐えきれなくなったのか、その場に崩れ落ちるように膝をついていた。

「私もッ………やば…いか、も…!」

私自身も二人同様、今にも体勢を崩しそうになっていたが、突然、身を刺すような風が弱まった。

「え…」

驚いて顔を上げると、そこには両手を広げて庇うように私の前に立つ白金の姿があった。

うそ、生身の体で敵の前に飛び出すなんて…!


「美しい音色を奏でる人間のスピリッツを使って…っ…邪悪な、キメラアニマのッ…武器に、しようとはッ…聴け!!このピュアな魂の音を!!」


そのとき、屋敷のスピーカーから美しいピアノの音色───おそらくマクガイアさんの演奏が大音量で流れ、キメラアニマはもがき苦しみ出した。

「なにっ!?」

「あ、風が…」

「くっ…やはりアイツはまだ不安定だ」

その時、思うように動けないのか、もがいていたキメラアニマの動きが止まる。


「今だ!ミュウナマエ!!」

「了解!」



「リボーンストロベリーチェック!!」











《 カイシュウ 》

マシャにパラパラを回収させ、その間にゆっくりと降りてきたスピリッツを急いでマクガイアさんに戻す。


「ちぇ」


目の前でキメラアニマを倒されたにも関わらず、キッシュは対して悔しくなさそうに…それどころか面白いものを見つけたかのようにこちらを見ている。

「…あんたが何考えてんのかしらないけど、何度来たって結果は同じよ」

「へっ、遊びの時間はまだまだあるさ。いずれまた遊びに来るよ」


じゃあねハニー、と笑みを深めたキッシュから半ば目を逸らすように変身を解いてマクガイアさんに駆け寄った。





(ふゅーじょん)


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