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「そのハンカチ、差し上げましてよ」
「えっ」
ワンちゃんと戯れてたらお嬢様と知り合いました。
昨日、白金と別れてからウェイトレスのバイトの話と、R-2000…もといマシャを貰ってない事に気付き、急いで赤坂さんにそれとなくまだ話していないことあるんじゃないのか、と連絡した。
ウェイトレスの件はやらない方が万々歳だが、マシャが居ないとキメラアニマの発見とかエイリアンの出現とか色々と困る。
そして今日、学校が終わってすぐカフェミュウミュウまで行って貰ってきた帰り、エンカウントしたわんころに懐かれて構ってあげていたら、飼い主──つまり、藍沢みんとが現れ、わんこのヨダレまみれの私にシルクハンカチを差し出してきたのだ。
このわんこミッキーだったのか…!!
「いや、でもこんな高価な物悪いし…」
「大したものじゃありませんわ」
さすが金持ちは感覚が違う。
とりあえず相手は折れそうにないので、ひとまず丁寧に畳んで制服のポケットにしまう。
ぶっちゃけファンとしては欲しい気もするけど、貰ってもシルクのハンカチなんて気後れして使えなそうだ。
「ちゃんとクリーニングして返すよ、私は桃宮名前。あなたは?」
「藍沢みんとですわ」
「藍沢さんね、よろしく」
「みんと、でよろしくてよ」
この世界でまともに同年代の女の子と話したことない私は嬉しさで頬が緩む。
さらにツンデレときたらもう我々の業界ではご褒美です。
「お嬢様、そろそろ…」
「ええ。では、ごきげんよう名前さん」
「あ、うん。またね、みんと」
みんとはミッキーを抱いて優雅にお辞儀すると、リムジンで去っていってしまった。
もうちょっと話したかったな…。
私は後ろ髪を引かれつつ、鞄から携帯電話を取り出し電話をかけた。
「もしもし赤坂さん?住所調べて欲しい子がいるんですけど…」
(おっかけじゃないよ)
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