「それじゃあお願いしますねー」

 通い慣れた開発室にトリガーを預けたのち、さてこれからどうしようかと足を止めた。ラウンジいっても、トリガーないから模擬戦しようにもできないし暇だ。開発室に居座るのは、邪魔になりそうだし。普段なら暇つぶし用の小説など持ってきているけれどすっかり忘れていた。

「とりあえず、なんか食べるか」

 もう時刻は正午をすぎてお昼時だ。朝ご飯から何も食べてないしお腹も空いている。ひとまずの目的地を食堂に定め、足を踏み出した。


★ ● ★ ● ★



「あ、深見さんじゃないっすか。本部で会うのは久しぶりっすね」
「おー、米屋か。確かにこっちじゃ久しぶり」

 食券を買おうと並んでいたところ突然後ろから話しかけられた。振り返ってみれば、予想通りの人物、米屋陽介が立っていた。私服姿で、今日もいつもと同じくカチューシャで前髪をまとめている。

「でもまあ昨日も学校で会ったし、あんま久しぶりの感じはしないけどね」
「それもそうっすね」

 米屋も私と同じくボーダー提携の普通校に通っているため時たま学校で遭遇する。学年は違うけれど、なんだかんだですれちがう度話をするためそんなに久々という感覚はない。

「深見さんは今日はどうして本部に?」
「今日、トリガー点検日だったんだよね」
「ああー、なるほど」

 そんな雑談をしながらも、順番が来たのでそれぞれ食券を買って(ちなみに私はうどん、米屋はカレーライスだった)。米屋、というより彼が所属する三輪隊は昨日点検日だったらしい。防衛任務の兼ね合いのためか、点検日は隊ごとに違う。

「あーあ、久しぶりに深見さんとランク戦しようと思ったのに点検日かぁー」
「まあまあ、点検終わったらやろう」
「まじっすか?!」

 やったー!と喜ぶあたり、米屋も生粋の戦闘狂だなと思う。でもその喜び様があまりにも大袈裟なので呆れてしまった。喜びすぎじゃない?

「だって深見さん全然本部に来ないからレアキャラなんですよ」
「おぉーう、レアキャラ扱いか」

 確かに、私はそもそも本部自体にあまり行かないし、ランク戦もマスター行ってからほとんどやっていないから納得できるけども。

 受け取り口にてうどんを受け取って、どこか座る場所はないかと探す。お昼時だということもあって席はどこも埋まっていた。並んで座るのは難しそう。

「あ、秀次だ」

 そう呼ぶなり米屋はその黒髪の少年の元に駆け寄って行った。秀次と呼ばれた少年こそが、米屋が所属する三輪隊の隊長だ。彼_三輪秀次の席の隣二席が空いていた。米屋と三輪は何やら話している様子だったけれど、三輪はこちらを一瞥するなり席から立ち去っていった。三輪が去ったことで空いた席は3席。三輪はまだ食事中ぽかったけれど。

「嫌われてるなぁ、私」

 立ち去る間際、こちらを見つめる三輪と目が合ったけれど、冷たいものそのものだった。席から立ったのも、たぶん私と一緒に食べるの嫌だったんだろうし。

「深見さーん、早く食べましょーよー」
「はーい」

 米屋の声に返事をして、ひとまず米屋の隣に腰掛けた。まぁ、三輪に嫌われていることぐらい分かっているんだけど、こうもあからさまだと傷付く。その原因を作ったのは紛れもない自分自身だから何も言えないけれど。



君を縛る影の長さ




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