遠くから鳴り響く目覚まし時計の音に、意識が浮上する。うっすらと目を開けてみれば、ここ数年で見慣れた天井がぼんやりと目に入った。

 体を起こすのも億劫で、手だけ動かしその発信源を手繰り寄せる。ボタンをチョップし音を止めると再び目を閉じ二度寝の体制に移った。今日から春休みで学校は休みだし、任務も無いしで久しぶりに何もない一日なのだ。二度寝くらい許されるべきだろう。ああ、でも今日の朝食当番レイジさんだったな。どうしよう、やっぱり起きようか。この部屋にまで味噌汁の美味しそうな匂いが漂ってきている。

 うだうだと悩んでいる間に時間はだいぶ経ってしまったらしい。レイジさんの朝食ができたから出てこいという呼びかけに返事して、やっと私は重い体を起こした。

 欠伸をしながらリビングに降り立つと皆は揃っていて既に朝食を食べ始めていた。

「おはよー」
「おはよう凛花。珍しいわね、アンタが遅いの」
「まあ今日から春休みだし」

 任務もないしと言えば、桐絵からいいなぁと羨望の声。桐絵は名門であるお嬢様校に通っているため春休みになっても学校があるようだ。その証拠に、今も制服を着ている。学校といえば、進学校組も今日は補習があるらしい。栞ちゃんも昨日そう言っていたし、この前荒船と犬飼もそうぼやいていた気がする。こんな時、進学校じゃなくて普通校にしていてよかったと思う。十分進学校でもやっていけるよと言われたものの、特に勉強が好きなわけでもないし、大学に行きたいわけでもないしで結局普通校にしたのだ。本当に大学に行きたくなれば勉強すればいいだけの話だし、第一あの太刀川でさえ進学できたのだ。いざとなればどうにでもなる。
 弟弟子に当たる太刀川は、戦闘面において絶大なセンスを有するが学校の勉学面においてはからっきしである。向こうの方が二歳年上で私もまだ高校生なのに、去年散々レポート手伝わされたの本当に解せない。出水と一緒にやったけど、あいつ目が死んでいたぞ。そういや太刀川といえばとりまるも元太刀川隊だけど彼も私がいない時手伝わされたのだろうか、今日来たら聞いてみよう。

「でも深見、今日は点検日じゃなかったか?」
「え?そうだったけ?」

 黙ってご飯を食べていたレイジさんが尋ねてきた。その内容に首を傾げる。私は、他の支部メンバーと違って本部のトリガーをそのまま使っているから月に一度本部まで点検に行かなければならないのだ。支部でもやろうと思えばできるけど、本部の方が確実だし。でも点検日はだいたい月末だからまだのはずだけど。

「迅から聞いてないか、今月の点検日は早くなるって」
「何それ聞いてないんだけど」

 そう答えると、レイジさんはあちゃーと言うような表情を浮かべた。「迅に任せるんじゃなかった...」

...うん、私もそう思う。

「本部まで送っていくがどうする?」
「いやー、自分で行くよ」

 レイジさんは確か夕方から防衛任務だったし、あまり迷惑はかけられない。ああ、でも行くのめんどくさいな。なんでよりによって今日なんだろ。せっかく何もない日だと思ったのに、結局本部まで行かないといけないし。

 思わず溜め息が漏れた。迅もちゃんと伝えてくれたらよかったのに。まあ今更あの幼馴染に何言っても無駄だってこと分かってるけどさ。



春春ふれふれ




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