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▼ Hello,New World!

 小さい頃からポケモンが大好きだった。家は森の奥深くにあって、傷付いた野生ポケモンの保護を仕事にしていた。物心着いた時から家の手伝いをして育った私がポケモンを好きになるのは当然のことだったのかもしれない。今ではポケモンに消毒するのも、包帯を巻くのもお手の物である。意外とこういったポケモンの手当てはコツがいるのだ。

 この世界の子供達は10歳までトレーナーズスクールに通うことが義務付けられている。ここでポケモンのタイプ相性だったり基本的な知識だったり法律だったりをわずか四年で叩き込まれるのだ。卒業後は、ポケモントレーナーになる子や、まだ勉強を続ける子、家の手伝いをする子など様々である。基本的には皆ここに通うことになるけれど、その仕組みは各地方で若干異なっている。
 このイッシュ地方ではトレーナーズスクールに通わなくても月に一度のテストに合格すれば在宅でも許されることになっている。流石に実技(ちょつとしたポケモンバトルや傷の手当てなどなど)は在宅者向けの講習会があるから通わないといけないけれど、本当にそれだけ。家が森奥深くにあるため毎日街に出れないということと、家が毎日忙しいということで私はトレーナーズスクールに行かず在宅で勉強していた。でも、それでいいと思う。同年代の友達が出来ないのは残念だけど、でもここでは普通にスクールに通うよりもっと沢山のことを学べるのだ!

 沢山森の中を走り回った。森の中でハハコモリがクルミルに服を作ってあげている様子も見たし、フシデが進化系のホイーガと共に体を丸めて転がり競走をしているのも見た。ダゲキやナゲキが一緒にトレーニングしていたり、オタマロの大合唱だったりと本当にポケモンのありのままの生活を覗いた。まあその度両親からは怒られたけど。一人で森に入るんじゃないって。手持ちポケモンいないし、危ないから当然といえば当然だけども。

 でも、スクールに行くよりもよっぽどポケモンの生態に近付けるのだ。こんな美味しい機会、逃す方がもったいないだろう。

 だから、10歳の誕生日を迎えても私はこのまま家の手伝いを続けるつもりだったし、実際そうなるだろうなと思っていた。なんせ、最近は急患のポケモンの数がやけに多い。母と父だけでは到底こなせる量ではない。まだ10歳ではないけれども、そこら辺のトレーナーよりも私はポケモンの手当てもしてきたと自負しているし実際もう立派な戦力として二人からはカウントされている。このまま家の手伝いをしようかな、と昨日講義で配られた進路希望調査を見てそう思った。9歳になってから、定期的にこうした進路関係のプリントが手渡されるようになった。

「チュリ、チュリ?」
「ああ、チュリネ。どうしたの?」

 ふと足元を見ると、チュリネが私の持つ紙を不思議そうに見つめていた。なんだかよじ登りそうな雰囲気を見せているため、椅子に座ったまま屈んでチュリネを持ち上げてやる。膝に座らせてやると、チュリネは大変満足気に頭の葉っぱを揺らした。

 このチュリネは、一年前私が森の中で傷付いて倒れているところを発見して、手当てして以来こうしてよく家に居座っている。この子は、実は色違いなのだが、自然ではそれが裏目に出て群れでいても一匹だけ目立ってしまい、敵ポケモンに襲われるケースが多い。チュリネも正にそうで、私が駆けつけるのが少しでも遅ければ、今生きているのも危うい。実際、私が家に戻るまでに周囲のポケモンの、こちらを狙う視線は鋭かった。弱肉強食、この世界は正にそれで弱いポケモンはすぐ強いポケモンに淘汰される。一応保護施設なんてやっているけれど、立ち入れてはならない自然の領域があることも分かっている。

 だからこそ野生ポケモンは野生へ。手当て次第、リハビリをしてある程度動けることを確認したら野生に返すことが一連の流れなんだけど、チュリネは一度野生に戻ったと思ったらすぐ家にやってきた。少し嬉しかったのは内緒だ。だって、このチュリネは私にとって初めて全部、手当てからリハビリまで看た子だったから。何回も野生に返そうとはしたけれど、結局その度戻ってくるので、両親も諦めているというのが事実である。ほとんど我が家のポケモンと化しているが、一応ボールで捕まえていないので、野生のままではあるが。

「進路希望調査っていって、将来何したいか書けって。まあ私はずっとここにいるかな」
「チュリ、ネ?」
「本当本当、家の手伝い楽しいしね」

 途端、チュリネの表情がぱあっと明るくなる。おおぅ、これは喜んでくれているのか?自惚れしてしまうが、チュリネは、もちろん私の両親にも懐いているけれど、一番私のそばにいる気がする。数えたことはないからなんとも言えないけれど、この一年を振り替えると、チュリネがいない時のことを考える方が難しい。そう考えると、私、この一年、チュリネとずっと一緒にいたんだなぁ。なんだか感慨深い。

「名前ー!チュリネー!ちょっとこっち手伝ってー!」
「はーい!」

 だけど、外からお母さんの声が聞こえたので現実に戻る。返事をして、チュリネにも声をかけて椅子を立ち上がった。手に持っていた紙は、テーブルの上に置く。また夜ご飯の時にも、お母さんとお父さんとも一応相談しないとな。

「行こっか、チュリネ」
「チュリネ!」

 了解とばかりに胸を張るチュリネを胸に抱きしめて、私は外に飛び出した。さあ、今日もどんな子に会えるかな。高鳴る心臓は止められそうにない。



主人公:名前(デフォルト名:ユキ)
イッシュ地方のとある森奥にあるポケモン保護施設で育った女の子。ポケモン大好きで、ポケモンのためなら体を張ることも厭わない節がある。

一話はこんな感じだけど、なんやかんやで冒険に出ることを決めた主人公が、ゲームシナリオに巻き込まれたり巻き込まれなかったりして世界中を仲間を集めながら冒険する話。とても長くなりそうな予感。

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