やわらかい心の壁


「それでは、私たちのクラス出し物はお化け屋敷にします」

 パチパチと教室中から拍手が鳴った。ありがとうございます、と教壇に立っていた文化委員2名はお辞儀をした後、元の席に戻っていった。「それじゃあ今からSHR始めます」と言ったのはクラス担任の先生。連絡事項など簡潔に伝えられていく。

「楽しみだな、文化祭」
「うん、そうだね」

 隣に座る彼に笑顔で話しかけられらものの、何ともない調子で答えてみせた。さすがに、6月にもなると慣れてくるらしい。まだいきなり話しかけられると緊張するけど。

 6月に入って、そろそろ梅雨に突入する頃。けれど、毎年この時期に文化祭が行われるのだ。そのため、先ほどまでクラス出し物決めを行なっており、色々案は出たものの結局は定番のお化け屋敷におさまった。去年は脱出ゲームやったから、今年は飲食系の出し物やりたかったけど、飲食系は決まりが多いからしょうがない。まあ、なにをやるにしても、楽しくなるだろうし不満もない。

「俺、去年は飲食系やったから楽しみだな!」
「そっかぁ」

 隣でニカッと効果音がつきそうなほど笑顔を浮かべる彼は相変わらず眩しい。本当に、どうしてこうなったのか。

 つい最近、クラスで席替えがあった。正直複雑な気持ちだった。彼_山本くんと席が離れるのは寂しいのもあったけれど、やっと離れられるというか...いい加減推しの虚像見え始めていたから助かった。そんなこんなで嬉しさ半分悲しさ半分でくじを引いたのである。...が、なんと今度は隣に山本くんである。むしろ状況悪化したような、隣同士なら授業のペアワークで毎日何かしら話さないといけないし。

「お、今度は隣だな!同じ山本同士頑張ろうぜ!」
「う、うん...またよろしく」

 本当に、心臓に悪い。こっそり手の甲をつまんだのは秘密だ。





_6月に突入、彼がここに転入してから二ヶ月は経過した。未だに謎は一つも解けていなけれど、それでも時間は経過する。

 彼と始めて一緒にやる学校行事、楽しみではないといえば嘘になる。ぼんやりと肩肘をついて先生の話を聞きながら、近い未来の文化祭に思いを馳せた。
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