熱されたきらきら


 文化祭の出し物も決まり、さあ準備と行きたいところだが、そうはならないのが現実である。

 今は6月頭。この高校は二学期制を採用しているため、年四回定期テストがある。学生の本分は勉強、つまり高二になって初めての定期考査がすぐそこに迫ってきていた。今回から理科基礎一教科だけだから前回よりは気が楽だけど、日本史と世界史の暗記量考えたら、今回もやっぱり結構大変かもしれない。

「あかり、数学教えてもらってもいいか?」
「いいけど、私もそこまで得意じゃないよ」

 数学の教科書片手に山本くんは私のノートを覗き込んだ。たった今、数学の授業があったのだ。びっしりと数式が連なったそのノートを見るだけで頭が痛くなりそうだ。私は数学嫌いだ。

 山本くんは、最近私を下の名前で呼ぶようになった。同じ名字でややこしいからという理由だ。それでも、初めて呼ばれた時はめっちゃびっくりした。男子に下の名前で呼ばれるとか小学校低学年ぶりである。そして、私を見るクラスの女子の目が怖かった。山本くんは、もうすっかりクラスの人気者で女子に圧倒的にモテる。なんならもうファンクラブあるとか聞いたような。まあ私はそこらへん疎いからよく分からないけど。

「ここの、なんでこの式になるんだ?」
「えーっとね、ここはこれをここに代入して...」

 シャーペンを走らせ、もう一度授業で解いた問題を解き直す。私も一度つまづいたところだ。解いてみせれば、山本くんはすぐ納得したのか、「なるほど」と声を漏らしていた。飲み込みが早くて何より。

「ありがとな、今度何か奢るわ」
「いやいや、これぐらい別にいーよ」

 別にこれぐらいで、彼のお金を散財してしまうのは申し訳ないし、それにもし奢られてみろ、ただでさえ怖い女子から何言われるか分かったもんじゃない。私はできるだけひっそり生きたいのだ。
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