A.普通に京都行きたかった



 いくら原作が終了したとはいっても、彼らの物語はまだ続いている。原作が始まる前、彼らにそれぞれ過去があったように、原作が終了しても、彼らの生活は続いている。

 だから、もちろん原作では描かれなかった学校行事もあるわけでして。

「おおーし、今日のこの時間は修学旅行の班決めするぞー」

 教室に入ってくるなり、そう放った担任によっしゃぁとざわめき立つ教室内。それもそのはず、修学旅行は中学校生活の中でも一番大きな行事といっても過言ではない。

 まあ、私としてはどうなってもいいんだけど。怪しまれない程度に教室内をチラリと見渡すと、主要キャラの面々もどこかワクワクした表情を浮かべていた。...原作読んで忘れそうになるけど、そういや彼らもまだ中学生だった。そりゃあ楽しみだよね。

「今年も行き先は京都ですか?」

 クラスの誰かが、そう担任に問いかけた。並盛中学校では代々、2年生の冬頃に京都に修学旅行に出かけることになっている。班別研修で好きなのは場所を巡ったりと割りと自由な内容で、生徒からの人気も高かった。私としても、時代小説でよく舞台になる京都には是非とも行ってみたい。

 今年も京都であってほしいという私の思いも裏腹に、担任はもったいぶったように口元を人差し指でおさえると、高らかに宣言した。

「チッチッチッ。今年はな、なんとイタリアだ!」
「「ええーー!!!」」



「う゛う゛ん」

 いやなんでだ。どうして京都からイタリアなんだ。ここ公立中学校だったよね?私立でもあるまいし、海外に修学旅行なんて金銭的にできないはず。それにしてもイタリアって何か作為を感じるのですが。

「なんとディーノ先生がイタリアの旅行会社の人と知り合いだそうで、そのよしみで色々と安くしてもらったんだ」

 はい、これは完全にアウトー。あの赤ん坊が裏で手を引いているに違いない。ディーノ先生を脅かすとかなんとかしてそう。

 それを裏付けるように、ガラガラと音を立てて教室前の扉から入ってきたディーノさんの目は死んでいた。

「あ、ディーノ先生。今回は本当にありがとうございます。あと、お前ら、そういえば言い忘れていたが、今回の修学旅行ではディーノ先生も引率として付いてくれることになったからな」

 途端、きゃあ、と色めきたつ女子達。それもそのはず、ディーノ先生は女子生徒から圧倒的な人気を誇る。

 また沢田綱吉こと主人公を見てみれば、案の定死んだ目をしていた。...うん、分かるわその気持ち。
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