人はそれをフラグと呼ぶ
図書室について、ディーノさんにいつもの場所を案内する。いつもの場所_時代小説がびっしりと並んだそのスペースは私の一番のお気に入りの場所だ。
そういえば、リング争奪戦があった直後、図書室の本の配置が変わりまくってまた配置し直すのが本当に大変だったことはここだけの話。そうだよな、確かここ嵐の争奪戦の会場になっていたよなと片付けながら思い出した。図書室は、見た目こそ完全に修復されていたものの、本の配置や貸出カードの置き場など、些細な部分はいくらか異なっており、元に戻すのに1週間ほどかかったのだ。もう是非ともここで戦うなんてことはしないでほしい。大切な本が傷んでしまう。
閑話休題。
とにかく、そのお気に入りのスペースを覗けば、ちゃんと勧めたい小説は全巻揃っていて安心した。勧めておいて、一巻もないとか笑えない。
ディーノさんに、ありましたよと教えると、彼はそれはそれは嬉しそうに笑った。
良かった、と。
...イケメンの笑顔は凄い、時にはそれだけで凶器になり、人を殺すこともできるのだから。
あまりのイケメンさに我を失いそうになるものの、何とか平常心を保ちきった私は、本の貸出の手続きを行った。図書室には滅多に人が来ないから、貸出業務をするのも久しぶりだったりする。少しばかり不手際が目立ってしまうのも許してほしい。何度かバーコード(並中の図書室はバーコードで本の管理をしている。便利)を誤認証しては、慌ててやり直すことを繰り返し、ディーノさんに笑われた。
ディーノさんが立ち去る間際、また来ると言った。嬉しいような、困るような複雑な気持ちに陥る。ディーノさんが時代小説の魅力に気がついてくれたらこちらとしては物凄く嬉しいというか、漫画の好きなキャラにも自分の好きなものを好きになってもらえるというものはとてつもなく喜ばしいことでオタク冥利に尽きるけど、モブである私が関わってはいけないだろうし、大体今まで図書室が私の安寧の地だったのに、彼が来ることで他の主要キャラも来てしまうのではないかと恐れもある。
いやいやでも、今日のことは本当にたまたま。また来ることがあってもモブである私と話すことなどきっともうない。
そう高をくくって_そういや、ディーノさん、いつものようなドジっ子発動しなかったけど実はひっそりと部下がついていたのだろうかと思いつつ、私はまたいつものように図書室の奥にこもって本を読みはじめたのだった。
やっぱり、司馬遼太郎は至高である。