しがないオタクですので
「で、ディーノ先生はどんな本をお探しなんですか」
1階から3階にある図書室まで行く途中、何も話さないのも気まずいと私はディーノさんに話かけた。
「ん?ああ、時代小説でも読んでみようかなって」
私は、思わず身を乗り出していた。
「時代小説ですか!どの時代がいいとかありますか!?」
「え、ええーと、幕末?」
よっしゃと心の中でガッツポーズ。何を隠そう、私の最近のブームは、時代小説である。特に好きなのは幕末。私が前世から好きな漫画も幕末が舞台だからというのも影響している。特に好きなのは新撰組。その漫画でも、真選組が推しだった(ちなみに、この世界ではちゃんと少年ジャ○プもあるし、前世で読んだ本も大体あった。嬉しかったしありがたい)。
ポカン、とした表情をしているディーノさんなんて、私には目に入らなかった。それより今は、どの本を勧めるかで頭がいっぱいだった。ちなみに、私の好きな作家は司馬遼太郎である。これも前世の時から。
「えー、やっぱり無難なのは『竜馬がゆく』かなあ。でも、『新撰組血風録』も捨てがたいし、新撰組関連なら『燃えよ剣』でもいいな。ディーノ先生、幕末で好きな人物いますか?」
「え、えっと、坂本竜馬だな」
「なら、『竜馬がゆく』ですね。この作品で、坂本竜馬が人気になったといっても過言ではないですし。やっぱり坂本竜馬もいいですよねー」
私としては『新撰組血風録』をおすすめしたいんですけど。そう続けようとして、私はやっと口を閉じた。ついつい熱くなりすぎた、周りに時代小説読みたい人いないから思わず喋り倒してしまった。好きなものについて聞かれると思わず喋りすぎてしまうのは、オタクの悪いところである。あー恥ずかしい。
「すいません、喋りすぎました」
ポカンと、呆気に取られた表情のディーノさん。申し訳なさでいっぱいになる、
でも、さすがイケメンというやつは違うといいますか、我にかえったディーノさんはまた二カリと笑うと、私の頭をポンポンとたたいたのだった。
「いや、真剣に選んでくれてありがとな。本、好きなんだな」
はァー、これだからイケメンってやつは!!!
頭ポンポンって、初めてされた。少女漫画の世界だけだと思っていた。実際にされると、胸の動悸が止まらないといいますか。
「ふぅー」
とりあえず息をはいて心を落ち着かせる。落ち着け落ち着け、やつにとってこれは通常運転なのだ。とんでもないやつだ、私じゃなかったらこれは確実に惚れる。彼が赴任して当日、ファンクラブができたのも今なら納得できる。
まだ顔に熱が溜まっている気がして、手で顔をあおいだ。ああ、心臓に悪い。