※ノットシリアス



「じゃあ、ちょっと話でもするか」

 そんな堅苦しくなるなよ、なんてディーノさんは笑っているけど、こちとらこの14年間モブとして生を授かり主要キャラとの関わりもほとんどと言ってよいほどないまま過ごしてきたである。そんな私がいきなり仲良く話せるか?しかも原作キャラトップクラスのイケメンと。答えは否。なんかもうイケメンオーラ凄すぎて無理死にたい。むしろ私、ここ数日普通に対応できたの割と奇跡だったのでは?

「おーい、影谷ー、また寝てないかー?」
「...ハッ、大丈夫です起きてます」

 悶々と考え事をしていたら話しかけられていたことに気が付かなかった。いけないいけない、今は目の前のことに集中しなければ。

 ぺちりと頬を軽く自分で叩いて気合を入れ直す。ディーノさんは少し驚いたように目を丸くしたのち、またあの人が良さそうな笑顔を浮かべた。

「...影谷は、本が好きなんだよな」
「えっと...あー...まあはい...そうですね」

 思わぬ質問にどもってしまう。一瞬誤魔化そうと思った。ついこの前、図書室のことは詳しくないと思いっきり口から出まかせを言ったわけだけれども、こちらを見つめるディーノさんを見ていたら、嘘なんて通じない気がしたのだ。それに、前ノリノリで本勧めてしまったこともあって。

「だよなー、この間、本勧めててくれた時からそうだと思ってたんだ」
「うっ...あれはできるだけ忘れてください」

 あの日のことは、今では葬りさりたい記憶ダントツの第1位である。あの日、調子こかなかったら今こんなに焦ったりなんかしていないのに。

 だけど、ディーノさんは何やら真剣そうな表情を浮かべると、こちらを見つめ...ちょっと恥ずかしいんでやめてください。そっと目を逸らす。何度も言っているけど、私に!イケメン耐性は!ありません!

「俺が影谷に話したいことはだな...ううーんと。どうして沢田達に嘘ついたんだ?」
「...えっ?」
「言い方が悪かったな。ほら、影谷はよく図書室に居るだろ?だからその、どうして好きなことを隠すのか気になって」

...あーあーそういう?というかサラッとディーノさん言っているけど、私が図書室に篭っているのもしかして知っていたんすか。それだったらかなり衝撃なんですが。

「いやー...、それは...」

 モブのままでいたかったからです。なんて言えるはずもなく。黙り込んでしまった私を見て、ディーノさんは何を邪推したのか、悩み事があったらなんでも相談しろよと一言。

 いや、私のつい最近の悩み、主にあなた達のことです。

「言いたくないならいいんだ。でも、好きなものは好きって言った方がいいぞ」

 そこまで言うと、ディーノさんは、まあお前次第だ、と私の頭をわしゃわしゃするだけして立ち去ってしまった。ちょうど授業終了のチャイムが鳴る。

 去っていくディーノさんの背中と、チャイムのリンゴーンという音を聞いて、途方に暮れてしまった。

 いやほんと、そんな重い理由なんてないんすけど...
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