思わぬイレギュラー
ところで、今の季節は冬。つまりは、そろそろ次期生徒会メンバーを決める時期でもある。でも私はただの平の図書委員だし、生徒会などそんな目立ちそうなポジションには絶対につきたくない。
だから、完全に関係ないと思っていた。ここで過去形であることに注目していただきたい。
「お願いだ影谷、次の図書委員長やってくれ!」
「え、嫌ですけど」
「そこを何とか!」
昼休憩、楽しくボッチ飯をしているところにやってきた現図書委員長を見て、嫌な予感がした。その予感どおり、委員長は私を呼ぶやいなや土下座する勢いでお願いしてきたのだ。次期図書委員長をやってくれないかという無理難題を。
それより教室の前で喋らないでほしい。目立ってしまう。教室からこちらを興味深そうに見る目線が辛い。
「無理ですよ、私、リーダーシップとか皆無ですし。他の人あたってください」
「それもそうだけど、影谷ぐらいしか頼めないんだよ!」
「いやいや、そんなわけないじゃないですか」
ツーと、冬であるというのに汗が背筋に流れる。大変嫌な予感がする。へし折ったはずのフラグが急速に再建築されてしまう気がする...!
だけど、委員長は私が最も恐れていた言葉を吐いた。
「だって、お前が一番図書室のこと詳しいじゃないか!」
あああああ、言いやがったコイツ!
「...先輩、ここじゃ目立つので場所変えましょう!」
じゃないと、ただでさえ今墓穴が掘られたのに、またまた粗相が暴かれてしまう。やめてくれ、ここまで私のモブ大作戦は割と好調に成功しているのだ。
「いや、めんどくさいからここで話す!」
「理不尽!!」
そして、彼は大声で、それはそれは目立つ声で私の制止も聞かずに話しやがった。私が次期図書委員長に向いている理由、図書室のことを熟知している、どんな本についても詳しい、いつも委員会の時に手伝ってくれる、誰よりも図書委員として仕事してくれている、などなど。
委員会の時に手伝うのは(精神年齢は)大人として少し助言しただけだし、仕事をするのも基本放課後は図書室にこもっているから必然的にそうなるだけであって。決して積極的にやっているわけではないのだが。
ここで思い出してほしい。今の場所は2年A組の教室前。今日に限って主要キャラの面々は教室内でお弁当を食べていた。つまりは、先程の話を聞いている可能性が非常に高い。
そして、私はこの前、彼らに図書室のことは詳しくないと誤魔化したばかりである。
「オワタ....」
フラグ、再建築?