プロフェッショナル、モブの



「大丈夫?ひかりちゃん」
「アー、ウン、ゼンゼンダイジョウブダヨ」
「片言だけど、本当に大丈夫なの?」

 呆れたようにこちらを見る花ちゃんと、心配した目を向ける京子ちゃん。授業が終わって、わざわざ心配してこちらに話しかけてくれるとは、これがヒロイン力か。輝きすぎてモブにはちと眩しい。

「朝から、まあ色々とついてなくて。それより、家帰ってから色々調べてみたんだけど」

 修学旅行の事前学習のやつ。そう告げると、2人とも興味はそちらの方にそれたようだった。よかったよかった、できることなら朝のことはなかったことにしたい。

「調べたやつコピーしたから後で2人に渡すね。できることなら、他の班員の人にも渡してくれるとありがたい」
「それなら、自分で渡しなさいよ」
「いやぁー、獄寺君とか怖いし」

 今度何か奢るから、そう頼めばしぶしぶ花ちゃんは納得してくれた。...よし、

「これからもお願いするかも。私、しばらく家の事情で早く帰らないといけないから、放課後残れないと思うし。その分、家で調べてくるからさ」
「そっかぁ。じゃあしょうがないね。皆にも言っておくね」

 残念そうな京子ちゃんには悪いけど、これで図書室行きルートも回避。心の中でガッツポーズをするものの、そんなことは表情にはおくびにも出さず、ごめんねと謝る。

 これが、とりあえず私が立てた作戦_通称モブ大作戦だ。安直だって?うるさい、カッコイイ作戦名思いつかなかったんだよ!

 とりあえず私がやらかしてしまう可能性が高いのは、図書室に行くこと、つまり本のある場所に行くことだ。私が本のことになると止まらなくなるのは、最近身をもって知った。もう二度と同じ轍は踏まない。

 図書室に行くことを避ける、つまりは放課後空いてなければいいのだ。事情があると知れば、きっと心優しい主要キャラの面々は無理やり私を付き合わせることはないだろう。ちなみに、家の事情というのは全くの嘘である。彼らの優しさを利用しているようで心苦しいが、こればっかりは仕方がない。

 私だって必死なのだ。今までモブらしく過ごしてきたのに、今さら主要キャラ達に関わりだすとか。修学旅行の班が一緒という立場をいかに目立たないようにするには。

 ここが、きっと山場だ。これされ超えれば、またモブ、傍観ルートに戻れるはずなのだ。

 そのためには、1ヶ月間図書室にこもれなくなることも耐えてみよう。正直、めっさ辛いけど。

 なんてことない表情を浮かべながら、私は2人の会話に相槌をうった。
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