彼女の目は死んでいた



 朝からとにかくついていなかったとしか言い様がない。今世の両親は仕事が忙しく、基本家にいない。そのため、現在はほとんど一人暮らしの状態だ。私としても、その方が精神的に助かる。馬が合わない両親と顔を四六時中合わせたくないのだ。だけどそれは、寝過ごしても起こしてくれる人物がいないということでもあって。

「やらかした...」

 セットしたはずの目覚まし時計の針は、3時を指していた_つまり、電池切れである。テレビをつけてみれば、既に時刻は8時を少しすぎていた。家から並中まで走っても最低10分はかかる。今から家を出ればもしかすると間に合うかもしれないけど、圧倒的に間に合わない可能性の方が高い。

 でも、遅刻するなんてそんな真似、昨日いきなり主要キャラの面々と接触してしまった手前、目立つことなんてするわけにはいかない。あと遅刻したら風紀委員の目が怖い。

 そこから私は鬼のような速さで制服に着替えると、食パンをかじりながら家を飛び出た。この時点で朝のSHRが始まるまであと11分。

 そして、次が今日の不幸ポイントその2。学校に間に合うことばかり考えていた私は、そういえば今日からいつもの通学路で道路工事が始まることをすっかり忘れており、通行止めをくらってタイムロスになった。この時点であと7分。

 更に、道を引き返して今世史上一番の走りを見せていたものの、何故か落ちているバナナの皮に気付かず、すっ転んで朝食の食パンを落とした。なんでバナナの皮?まじで落ちてるんかい!とツッコミながらも、走る足は止めない。この時点であと2分。

 だけど、ここからが最大の難所だったといいますか。当然間に合わなかった私は、風紀委員に捕まりそうになり...本が大量に入ったスクールバックでぶん殴った。そうすると、吹っ飛んだリーゼント。本って結構重いんだよね、凶器にもなるんだね。改めて思い知った。殴った直後は本当に血の気が引いた。私も自分がゴリラだとは思っていなかった。でも他の風紀委員が来ている気配がしたため急いでその場をさった。罪悪感半端ないけど、いつか謝るので許してください。多分。

 しかしながら、教室についても私の不運は尽きなかった。いつもより重いドアを開ければ、集まる視線の多いこと多いこと。

「お、影谷来たかー...ってどうしたんだ。なんかすげー疲れてんな」
「ハハハ...ちょっと、朝から寝坊しまして」

 もはやそんな言葉しか出なかった。そうだった、そういや今日の1時間目、よりにって英語、ディーノ先生が担当だった。
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