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わざわざ瑞穂が隣町でバイトをするのは、風紀委員に見つかりたくないという理由があるからだ。

瑞穂が並盛中学校に入学して一番驚いたのが風紀委員の存在だ。別に、風紀委員はどこの中学校にもある。彼女が「前」通っていた中学校にも風紀委員は存在していた。だが、明らかにこの並中の風紀委員は変わっているのだ。

瑞穂以外の風紀委員はほとんど男子である。ほとんど、ではなかった。瑞穂以外の全ての風紀委員は、の方が正しい。

でもまだ有り得ない話ではない。たまたま瑞穂以外の風紀委員が全員男子になったと考えることもできるだろう。

だが、並中の風紀委員は他とは何もかも違っていた。風紀委員の男子は全員学ランを羽織り、リーゼントをしているのだ。並中の制服は、現在は男女ともベストである。だが、彼らの服装はいつも学ランリーゼント。そう、一昔前のヤンキーの代名詞とも言えるリーゼント。時代錯誤も甚だしい。

しかも、まだ瑞穂は直接見たことがないものの、風紀委員長の雲雀恭弥という人物は、並中どころか並盛全体を支配している...らしい。らしい、というのはそれは噂にすぎないからだが、瑞穂はそこまで聞いたところで聞くのをやめた。それがもしただの噂だとしても、そこまで恐怖の対象として畏怖されている人物がトップの風紀委員に属しているなんて考えたくもない。さすがに廊下を走るくらいなら大丈夫だと思うけれど、バイトをしているなんてバレた日には絶対目を付けられる。それだけは勘弁である。ただでさえ、こちらは家のことで手一杯なのに。

瑞穂だって風紀委員に入りたくはなかったのだ。バイトがあるから、帰りが遅くなる委員会や部活に入るつもりは全くなかったというのに。それもこれも、あのクソ野郎のせいだ。学校の前日、久々にあの野郎が帰ってきたせいで、

グルグルと瑞穂はずっとそんなことばかり考えていた。必死に目の前の状況から目を背ける。

「...どうして、こんなところに雲雀さんが」

少し遅刻したもののいつも通り終わったレストランのバイト帰り。何となくいつもは通らない裏道を通ってみれば、広がるのは大量の不良らしき人物達の屍、とその上に王者たる雰囲気で佇む例の風紀委員長、雲雀恭弥。写真でしか見る機会がなかった人が、今目の前にいる。

こちらをゆっくりと振り返った彼と目があって瑞穂の背中に冷や汗が流れた。

_彼の口癖は「咬み殺す」。もしロックオンされてしまえば...



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