2ー5
「やっぱりこうなりますよねー!」
現在、瑞穂は並盛町を爆走中。後ろには例の風紀委員長、雲雀恭弥。度々トンファーをこちらに向けてくるため、恐怖が倍増である。ただでさえ追いかけられているだけで怖いのに、トンファーとかやめてほしい。切実に。
トンファーが空を切る音が聞こえる。
「ワオ。よく避けるね」
「あああありがとうございます。で、お願いですからトンファーはやめてくれませんかー?」
「やだ」
走りながらも会話は続ける。かれこれ5分間、瑞穂は雲雀と鬼ごっこという名のデス・ゲームを繰り広げていた。雲雀に捕まったら死ぬ。圧倒的に逃げる側が不利の無理ゲーを、瑞穂は何とか逃げ通していた。
「(やっぱり、適当にくらっとけばよかったかなぁ)」
5分前、瑞穂と目があった雲雀は彼女にトンファーを振るった。何の躊躇もなく、さも当然のように。痛みには慣れている。だから、我慢してしまえば彼も興味が失せて適当に去ってくれるだろう。そう考えていたのに、体は正直だった。瑞穂は持ち前の反射神経で、それを咄嗟に避けてしまったのだった。
「ワオ。よく避けたね」
その時の雲雀の目は、新しい玩具を見つけたかの様に爛々と輝いていた。
「(あ、これやばいかも)」
頭の中で警鐘が鳴り響いていたが、時既に遅し。逃げ出した瑞穂を雲雀が追って、今まさにこの状態に至る。
毎日バイト先まで走って体力作りをしているものの、瑞穂にも体力の限界が近付いてきていた。ただでさえ、今瑞穂を追いかけているのは最凶と名高い雲雀。尋常ではない速さで追いかけられ、またバイト終わりということもあって既に瑞穂はヘトヘトだった。
走るスピードが段々と遅くなった瑞穂に雲雀は追いつくと、トンファーを振るった。後ろ目で迫り来るトンファーを見て、瑞穂の視界はブラックアウトした。