2ー3


「本当に、ありがとう!」

「いやいや、私が勝手に手伝っただけだから」

それじゃあ、私時間やばいからもう行くね。彼女はそう言うと、颯爽と体育館を後にした。

忙しいのに、わざわざ手伝いに来てくれた彼女に申し訳ない気持ちになるが、少し嬉しい気持ちになったのも事実。

今日は嫌なことばかりだったけれど、案外そうではないのかもしれない。綱吉は、その場で伸びをすると体育館館を出るべく足を進めた。

だが、綱吉が体育館を出ようとしたところで、京子ちゃん_好きな人とその友人の黒川花が談笑しながら歩いてくるのを発見し、その場で眺めていたところ、京子ちゃんの元に剣道部主将である持田先輩が話かけてくる様子を見て、彼は自身の失恋を悟ったのだった。

前言撤回。やっぱり今日は、嫌なことばっかりだ。




モップをし終わり、体育館前方にある時計を見れば、既に時刻は5時を指していた。バイトが始まるのが5時半からだから、今から急いで行っても遅刻は免れない。

「それじゃあ、私時間やばいからもう行くね」

瑞穂は、それだけ言うと体育館を急ぎ足で立ち去った。

体育館から出るとすぐに、向こうから歩いてくる友人2人_京子ちゃんと花ちゃんを見つけて手を振る。笑顔を見せてくれた友人2人に感謝だ。こんな常に真顔の自分でも嫌な顔ひとつせずに話してくれる、本当にいい子達だと心から思う。

校門を出てすぐ、ポケットに忍ばせていた携帯でバイト先に電話をかける。携帯電話の校内持ち込みはもちろん校則違反だ。だが、最後の授業が遅れて時間に間に合いそうにない時、バイト先に連絡する為に、瑞穂は常に携帯電話を持ち込んでいた。校則違反といっても要はバレなければ問題ないのだ(良い子は真似しないでね)。

「もしもし、和田原です。今日のバイト、少し遅れます。すみません」

走りながら瑞穂はバイト先に電話する。ゆっくりでも大丈夫だからねー、と言ってくれた店長には頭を上がらない。本来、バイトが出来ない中学生の瑞穂でも、幼少期からの付き合いのよしみで雇ってくれている。

息ひとつすら切らさず、瑞穂は走り続ける。走ることは前から好きだ。特に、今世では嫌なことを一時的でも忘れることが出来る。家のことを考えなくてもいい瞬間は、瑞穂にとって貴重な時間だった。

早くお金を貯めて、さっさと自立する。それが当面の瑞穂の目標だ。そのためにも、軍資金としてお金を今のうちから稼ぐ必要があるのだ。



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