2ー2


体育館に入ってみれば、案の定、見慣れた茶髪のツンツンヘアーの男子が一人でモップをかけていた。沢田君、と瑞穂が声をかけると、彼はこちらを向き、大きな目を更に見開いた。

「わ、和田原さん?!どうしてここに?!」

「さっき、クラスの男子とすれ違って。アイツらも体育館掃除だったでしょ」

手伝うよ、と瑞穂は体育館倉庫にモップを取りに行く。申し訳ないからいいよ、と言う彼の言葉は無視をする。彼を手伝うのも瑞穂の勝手にすぎない。ただ、あの二人_前世の両親ならそうすると思って。

モップを取りに行った瑞穂の後ろ姿を見て、綱吉は改めて彼女が人気者である理由を思い知るのだった。

何でも完璧に出来るのに、彼女はそれを決して周囲にひけからしたりしない。むしろ、彼女は綱吉のような者にも優しかったような気がする。小学校の体育の授業でサッカーのチームが同じになった時も、彼女は綱吉のミスも颯爽とフォローして敵陣に乗り込んでいた。男子にも引けを取らないそのドリブルに、クラス中の男子から「アイツのいるチーム、反則すぎるだろ」と言われていたが、全くもってその通りだと思う。ダメツナである自分がいても、彼女のいるチームが負けた記憶がない。

「沢田くん、私なんかついてる?」

「へ?いやいや何でもないです!」

「いや、なんで敬語?」

さっきからこっちばかり見てるからゴミでもついてるのかなーって。彼女はそう言うと、手慣れた動きでモップをかけ始めた。綱吉も急いでモップをかける。綱吉が考え事をしている間に、いつの間にか彼女は倉庫から戻ってきていた。和田原さんのことを考えていました、なんて綱吉には到底言えない。

「(本当にいい人だよなー、和田原さんって)」

クラス中の皆が自分のことをダメツナと呼ぶのに対し、彼女は一度も自分のことをそう呼ばない。彼女は自分とは違い、何でも出来るのに対して、だ。

彼女が思いっきり笑ったところを、まだ綱吉は見たことがない。いつもクラスの中心にいる彼女だが、大抵彼女の表情は無表情だ。目はあの某ジャンプ漫画の主人公のように死んでいるし、表情筋もあまり動いていない。人によっては冷酷だと感じるかもしれない表情。それでも、彼女の周りに人が集まるのは彼女の人柄ゆえか。

「よっしゃ、大体モップできたね」

「う、うん」

そして、女子とまともに話せない綱吉にも話かけてくれる唯一の女子でもある。

彼女がいた為か、思っていたより早く体育館の掃除は終わった。



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