2ー1


朝5時まで隣町のコンビニでバイトをしてから、急いで家に帰って制服に着替えて、準備をすれば登校時間ギリギリになる。その度、自転車を手入れしようと思うのだがまだ倉庫の奥に埋まったままである。随分前に買ってもらった自転車は、当時はまだ大きすぎてすぐ倉庫に片付けたのだ。きっと今頃ほこりにまみれていることだろう。

いかんせん、時間がない。毎日急いで家に帰っては隣町のレストランでバイト。そのバイトが終わって一旦家に帰って休憩を少しとってからまた隣町に繰り出し、今度はコンビニでバイト。瑞穂は、こんな社会人も真っ青なブラックスケジュールを週に一度休みをとるだけで、あとは気合いで乗り越えていた。気合いがあれば意外となんとかなるもんだ、とどこぞの熱血漢のように考える瑞穂。

友達のお兄さんの影響を受けてしまったのだろうか。「極限」が口癖の彼_ボクシング部主将でもある笹川了平を思い出して、瑞穂は首を横に振った。流石に、私はあそこまで熱血漢じゃない。

「(明日はバイト休みだし、今日は1日頑張ろう)」

気を取り直して、瑞穂は通い慣れた通学路を走った。





「やっぱりアイツはダメツナだな」

「な、テストは入学以来全部赤点、スポーツはアイツのいるチームは必ず負ける」

「(...あー、沢田君のことか)」

ギャハハと笑うクラスメイトを尻目に、瑞穂は今、廊下を走っていた。廊下を走るのは、もちろん校則違反、尚更(一応)風紀委員である瑞穂がしてはならない行為だが、六時間目が体育で授業が長引いてしまった以上、バイトに間に合うためにも廊下を走るのは許してほしいと瑞穂は思った。まぁ、瑞穂が今校則無視で走っているのも、実際一度、風紀委員に見つかった事があるからで。

その際、同年代とは思えないその風紀委員の老顔に思わず同情してしまったのは心の中だけに留めておく。苦労人なんだな、そう思った私は悪くない。

「(それにしても、さっきの男子達も体育館掃除担当だったから、もしかしなくても沢田君に掃除丸投げしているよね)」

あの中に、見慣れた茶髪のツンツンヘアーは見つからなかった。ということは、考えるよりも明白である。

「...ちょっとだけ手伝うか」




バイトよりも、困っている同級生を助ける方が大事に決まっている。瑞穂は急ブレーキをかけると、反対方向_体育館に向かって走り出した。



瑞穂は生来、お人好しな性格なのだ。それがたとえ親交が浅いクラスメイトであっても。



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