12ー2
結局返せなかったお詫び詰め合わせの箱を抱えて、正一は少女と帰路についていた。
「そういえば、えっーと、君はどうしてあそこに倒れてたの?」
「あ、僕、入江正一です。えっと、倒れていた理由は...」
一体なんと言えばいいのだろう。住所どおりの家を訪れてみれば、手榴弾は投げるわバズーカーは打つわ銃弾はかするわ人は巨大化するわ。
「あ、言いにくかったから言わなくていいからね?!」
「うん、ありがとう...!」
遠い目になっていく正一を見たのか、少女は慌てて発言を撤回した。ありがたくそれに甘えることにする。とてもじゃないが、上手く説明できそうにない。
「そういえば、あなたはどうしてあそこに?」
まだ道を曲がらない少女は、どうやらここら辺に住んでいるわけではないようだった。てっきり、近所に住んでいると思ったのだが。あー、と少女は答える。
「こないだ、あの辺りの家で夕食をご馳走になったから、それのお礼も兼ねて訪ねてたの。そしたら、入江君が倒れているのを見つけて」
「そうだったんだ...」
どおりでまだ帰り道が一緒なわけだ。
ゆっくりと話をしながら、正一と少女は歩く。まだ正一は緊張するものの、明るい彼女といると少しずつ気持ちが楽になっていった。普通、女子とはあまり話せない。それなのに、少女とは親しい友人のように話せるから不思議だ。
今日は不運なことばかりだったけれど、少女と会えたことは不幸中の幸いだったかもしれない。沈んでいく太陽を見ながら、正一は心の中で神様に感謝した。
「それじゃあ、私、ここで曲がるから」
「あ、うん」
少女が立ち止まったところで正一は目を見開いた。ここから先の場所は、確か高級住宅地だ。正一のような一般家庭には程遠い場所である。
「それじゃあ」
手を振って少女は背を向けた。少女の茶髪が、夕日に照らされてオレンジ色に染まる。
だが、正一はその場から足を進めなかった。このまま別れてしまえば、一生彼女には会えない気がした。漠然と、そう感じた。
「あ、あの!」
気付けば正一は少女に向かって叫んだ。少女がゆっくりとこちらを振り向く。
「あなたの、名前はなんですか?!」
すると、少女は驚いたような表情を浮かべ。確かにこちらの目を見て、その問いに答えたのだった。
_一瞬、視界の端で、黒髪の女性が笑ってこちらを見た気がした。
「私の名前は和田原瑞穂。よろしくね、入江君」
(_この世界で、少年と少女は邂逅する。それは奇跡か必然か)