11−4
1階で気絶した獄寺を回収してベッドに寝かせる。その際、ドアノブが煙を出して溶けていたことは何も見なかったことにする。断じて何も見ていない。
獄寺の姉、ビアンキも部屋に招き。簡単に自己紹介もすまして、やっと瑞穂は問7の答えを口に出した。
「答えは、『4』だよ」
「答えは、『3』だよ」
だが、誰かの声と重なる。
「お父さん!」
ハルは後ろを振り返って叫んだ。いつの間にか、扉の傍に恰幅の良い中年ほどの男性が立っている。どうやら彼が声の主らしい。どーいうことだよ、綱吉はハルに尋ねた。
「うちの父、大学で数学も教えているんです。だから、お父さんも呼ぼうかなーって」
「それなら、ビアンキ呼ばなくても良かっただろ?!」
「で、でも!ハルもビアンキさんに会いたかったんです!」
「そーよ、失礼ね」
ぎゃあぎゃあともめ始める綱吉とハル、そしてビアンキ。その中で、瑞穂は眉をしかめていた。
「(うーん、確かに答え、4だと思うんだけどなー、計算ミスったかな...?)」
確かに計算した限りでは4になったが、相手はその道のプロ、大学教授である。不安になるのも仕方がないもの。
ここで、今日は部屋の片隅で沈黙を貫いていたリボーンが口を開いた。
「いや、答えは瑞穂の4で合ってるぞ」
「ええ、そうなの?!」
揉めるのを一旦やめ、綱吉はリボーンに聞き返した。不服そうな男性もリボーンに尋ねる。
「どうして、私が間違っているのだと思うのかね?」
「おめー、途中で公式ミスってんぞ」
ほら、途中で間違えて引いてるぞ。リボーンは瑞穂が持っていたプリントを取ると男性に見せた。ミスひとつないその回答に、男性は自分の間違いを認め...もう一度リボーンを見て驚きの声をあげた。
「あなたは、もしかして天才数学者のボリーン先生ではありませんか!!」
「....はぁー!?何言ってるんですか!?」
綱吉は思わず叫んだ。だが、男性は興奮からその叫びも気にせず、カバンの中からゴソゴソと何かを取り出した。
「これだ!この写真を見てみろ!彼こそ、学界に舞い降りては不可能とされた問題をことごとく解いていく、幻の天才数学者、ボリーン先生その人だ!」
「え、...確かに似てるけど...」
もう何十年も前の雑誌には、画質は悪いものの、確かにリボーンそっくりの写真が載ってある。
「...あの噂本当だったんだ」
綱吉達がその事実に騒然とする中、瑞穂は一人、納得したように呟いた。そういえば昔、聞いたことがあったような。