11ー2
「宿題の方は大丈夫そう?」
「ああ、えっと、今この問7が分からなくて」
はい、と綱吉からプリントを手渡された瑞穂は、その問7と書かれた問題を見て...絶句した。
「...どうかな、和田原さん、解けそう?」
「うーん、解けないことは、ないと思うけど...」
大学入試レベルだと思われるその問題。記憶のファイルを探ってみれば、この形式の問題を一度模試でやったことを思い出した。もう10年以上も前の話なのでだいぶ記憶は薄まってしまっているが解けないことはない。それに、一応「今」でも勉強は続けているのだ。
「とりあえず、やってみるね」
持ってきた筆箱からシャーペンを取り出すと、瑞穂は問7を解き始めた。ペンを進ませ、ガリガリと数式を解いていく。問題を解く爽快感には、離れ難い一種の麻薬のような中毒性がある。それがたまらなく好きだった。
「はひ、和田原さん、凄いです...!」
そのペンの進む速さを見て、ハルは思わず感嘆の声をもらした。自分が解けなかった式を、瑞穂はあっという間に解いていく。
「やっぱり、和田原誘って正解だったな」
「うん!」
「...そうっすね」
綱吉達3人も、スラスラとペンを進める瑞穂を見て安心したように顔を見合わせた。もっとも、集中している瑞穂には聞こえなかったが。
瑞穂が問題を解き始めて数分後。開けっ放しにされた窓の外は日が落ち始めている。瑞穂は出てきた答えに満足すると頷いた。シャーペンを置き、「できたよ」と一言。
「本当!?解けたの!?」
「うん、途中で計算ミスしてなかったらだけど」
おお、と綱吉達4人は身を乗り出した。瑞穂もプリントを手渡そうとして...その手を止めた。
「どうしたの?和田原さん?」
「...窓、窓見て窓」
「えっ?」
その言葉に綱吉達は窓を一斉に見た。そこには窓をよじ登って部屋に入ってくる5歳児ほどの子供の姿が。そして、その特徴的な髪型の子供に、ハル以外の面々は既視感があった。
「お、おれっち...たまたま通りがかっただけだもんね」
一斉に集まった視線に、一瞬たじろいだその子供は口笛を吹いて誤魔化す。そのまま部屋の片隅に置かれた鍋を覗き、中身を見て落胆している。瑞穂が来る前に、ハルが気分転換にと用意したキムチ鍋だった。
「ランボ!?」
綱吉は思わず叫んでいた。リボーンを暗殺しに、一度沢田家を訪れたこの子供、ランボはあの後もこうして度々沢田家に侵入してくることがあるのだ。