11ー1


蝉の鳴き声が響き渡る中、瑞穂はゆっくりとレストランのバイトから帰っていた。いつもは走って帰っているが、たまにはゆっくり歩いて帰るのもいいかもしれないと思いながら。いつもは夜で暗い道も、まだ明るい内に通ると印象も変わるもの。こんなにゆっくりと町を見る機会もなかったと、どこか晴れ晴れした気持ちで歩いていれば、ポケットから伝わってくる振動。

振動の発生源である携帯電話を取り出してみれば、山本からメールが届いていた。

「『ツナの家で宿題中。分かんねー問題があるから教えてくれないか』、か」

そういえば今日は夏休み補習があった。おそらくそれの宿題だろう。今日はもうどちらのバイトも終わっているので特に用事もない。

「了解」と返事を送ると、瑞穂は走ってひとまず自分の家に帰ることにした。戸棚に確かクッキーがあったはずだ。手土産として持っていこう。

結局、ゆっくり家に帰ることは叶わなかった。



ピンポンとインターホンを鳴らす。瑞穂は沢田家をまじまじと眺めた。場所こそ知ってはいるが、こうして訪ねるのは初めてで少し緊張する。「はいはーい」と母親らしき女性の声が聞こえて、瑞穂は背筋を伸ばした。

「はいはーい、沢田です...ってあらあら、女の子だわ」

「はい、綱吉君と同じクラスの和田原です。宿題を一緒にしに来たのですが...」

「ツナったらまた可愛い女の子連れてきちゃって。隅におけないわー、案内するわね」

失礼します、靴をぬいで瑞穂は沢田家に足を踏み入れた。綱吉の容姿はどうやら母親譲りのようだ。彼女と綱吉はよく似ている。

「あ、ささやかなものですが、クッキーどうぞ。皆さんで召し上がってください」

「わー、ありがとう!嬉しいわ!」

手土産を渡せば、彼女は花が咲いたように笑った。


2階を案内されて、瑞穂はドアが開けっ放しのその部屋を覗きこんだ。

「お、和田原!いいところにきた!」

それに気付いた山本がこちらを呼ぶ。部屋中の視線がに集まった。そこには、綱吉と獄寺、山本に知らない少女_ここら辺では超難関校であるエリート女子中学校の、緑中の制服をきた少女の姿。

「あ、あなたが噂の和田原瑞穂さんですね!私、三浦ハルと申します!」

「あ、うん。私が和田原瑞穂です」

その少女は、立ち上がるなりこちらにそう自己紹介をした。髪をひとつにまとめた彼女から、活発という印象を受ける。瑞穂も自己紹介を返して、綱吉に促されるまま部屋に腰をおろした。



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