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投げ出されたナイフを反射で躱す。あと少しでも反応が遅ければかすっていただろう。リボーンの言葉は本当だと改めて実感する。本気で、彼はこちらを殺す気でいる。ひやりと、瑞穂の背筋に冷や汗が流れた。ナイフはいささか恐怖心が残る。
第二波が来ると身構えする瑞穂と、どこかお気楽な調子が抜けない山本。だが、そんな2人とリボーンとの間に、割ってはいるひとつの影。綱吉だ。
「待てよリボーン!本当に山本と和田原さん殺す気かよ!」
まだ、綱吉は山本と瑞穂が試験を受けることに断固として反対だった。瑞穂は事情を知ってしまっているが、山本はまだ何も知らない。第一、山本とはマフィアなど関係なく普通の友達として接したいのだ。瑞穂も同じく、今まで色々と助けてもらった手前、恩を仇で返すような真似はしたくなかった。
しかし、そんな綱吉にも構わず、リボーンは無常にも綱吉に向けて言葉を発した。
「ボスとしてツナも見本を見せてやれ」
「はあ!?」
それはつまり、綱吉も一緒に試験を受けろということである。
「お、ツナも受けんのか!誰が試験に合格するのか競争だな!」
よっしゃ、と嬉しそうな山本とは対照的に綱吉の顔は真っ青だ。ダラダラと汗が流れる。綱吉は、ダメツナと呼ばれるように運動神経は決して良いとは言えない。そんな自分が、リボーンからの攻撃を躱すことができるのだろうか?答えは否だ。
「(絶対、死ぬ!!!)」
ムリムリムリムリ絶対無理!
綱吉の心の中は大荒れだ。まだリボーンが来てからひと月もたっていないが、この赤ん坊の恐ろしさは誰よりも理解している。今すぐ逃げ出したいが、無常にもリボーンの「んじゃ再開すっぞ」という言葉により無理だと悟る。
「さあ、逃げろ!」
「そんなぁー!待ったーっ!」
最早情けない悲鳴しか漏れない。一方、隣を走る山本は、こんな状況でも笑顔が絶えず、むしろ楽しんですらいる。
「(すげー、命懸けの状況楽しんじゃってるよ!)」
山本は、野球部で鍛えていることもあってか、抜群の反射神経でナイフを躱していく。_そして、それは瑞穂も同じだった。
山本ほどではないが、持ち前の反射神経で瑞穂も攻撃を躱していく。
「沢田君!」
瑞穂は走る足は止めないまま綱吉に話かけた。
「とりあえず今は逃げることだけ考えよう!じゃないと、これは確実に当たる!」
「...分かった!」
確かに、今は他のことを考える余裕はなさそうだ。叫ぶように、綱吉は答えた。