9−1
「リボーン君、いくら何でも山本を、その、マフィアとかに関わらせるのはどうなの..?」
「こいつと同意見なのは癪ですけど、ほんとうにアイツをファミリーに入れるつもりですか、リボーンさん」
朝、リボーンから呼び出された瑞穂は、同じく呼び出されたのであろう獄寺と共に、生徒が登校してくる様子を眺めていた。その生徒の中には綱吉と今の話題の中心である山本の姿もあり、2人は何やら楽しそうな様子で会話している。
「つもりじゃなくてもう入ってるぞ。オレが決めた」
「な!」
ガーンと効果音がつきそうなほど、ショックを受ける様子の獄寺を横目に見ながら、瑞穂は諦めから溜め息をついた。この赤ん坊に何を言っても無駄だということは、まだ数日間の付き合いでも十分理解している。なんせ出会って早々銃口を向けられ、また昨日も開口早々「明日はバイトを休め」と銃口を見せなら脅してきたのだ。どうしてバイトしてるの知ってんだ。瑞穂は最早考えることを放置した。
「にしても、こんなこと私に言ってもいいの?私、一応部外者だよね?」
一週間ほど前、瑞穂はリボーンからのファミリー勧誘を断ったばかりである。マフィアなのに、こんな機密情報をポンポンもらしてもいいのだろうか、というのは瑞穂の疑問である。機密どころか、彼女はボンゴレの事情やら、既に色々と知ってしまったのだが。
しかし、リボーンはニヤリと瑞穂に笑いかけた。
「オレは、仕方ないとは言ったが、諦めたとは一言も言ってないぞ」
「え、いや、何それ屁理屈」
「そーですよ、何をおっしゃるのですか、リボーンさん!」
ずっと山本を睨み見ていた獄寺も、すかさずリボーンの発言に食いつく。彼としては、自分以外の人間がファミリーに入ることをあまり受け入れたくないのだろう。それに、瑞穂はリボーンからの勧誘を一度断っている。彼が瑞穂を気に入らないのも当然の話だ。
「考え直してください、リボーンさん!オレは、コイツも、あんな無礼な奴を入れるのも反対です!」
だが、そんな獄寺の叫びも虚しく。リボーンは鼻ちょうちんをつけて、スピーと寝息をたてながら既に夢の世界に落ちていた。
「あー、クソ!」
獄寺は頭をかきむしると、瑞穂をギロリと睨んだ。
「オレは、オメェーがファミリーに入ることも認めねぇからな!」
...いや、私、入るなんて一言も言ってないからね?
瑞穂の心の叫びも虚しく、獄寺は足音を立てながらその場を去っていった。