7−2


「いや、いやいやいや。確かに山本は友達だけど、そういうのじゃないよ。どうしてそう思ったの?」

瑞穂は慌てて否定した。確かに、山本は普通の男子より仲が良いとは思うが、一体どうしてそのようなことになるのか。

しかし、黒川花はまた呆れたように話し出した。

「だって、あんたと山本、最近昼休憩キャッチボール行くじゃない。同じ野球部でもないのに」

ぐ、と声が漏れる。確かに、キャッチボールなら野球部同士でやった方が良さそうだ。

「それは、アレだよアレ。野球部の皆は忙しいかもという山本の配慮。私、休憩はよく暇持て余しているし」

「こないだ、クラスの野球部のやつ、教室でホウキ使って野球してたけど」

「う゛っ」

おい、野球部!教室で野球やるなら外でやれ!

脳内で彼らに八つ当たりする。確かに、自分を誘うより、野球部の面々を誘って練習をする方が良いはず。

「本当に仲良いねって、皆思ってるよ」

無邪気に笑う京子を見て、今更ながら瑞穂は、ただの友人の距離感ではなかったと反省したのだった。





体育の授業が終わり、体操服から着替えようと瑞穂も校舎に戻ろうとしたところで、一人グラウンドに佇む綱吉を見た。チラリとスコア表を見てみると、どうやら彼のいるチームは負けてしまったらしい。それで、おそらくトンボがけを押し付けられた、と。そういえば、この間もこんなことがあったなと思い出した。確かその日のバイト帰りに雲雀に追いかけられ...寒気がしたきたため思い出すのをやめる。

「(手伝うかな、)」

今日は早く体育が終わったため、まだバイトが始まるまで時間がある。この広いグラウンドを一人で整備するのは大変そうだと、瑞穂が手伝いに行こうとした時だった。

「助っ人とーじょー」

「(...あ、山本)」

トンボを持った山本が綱吉の元に駆けつけた。そういえば、山本は綱吉と同じチームだった。何やら笑顔で綱吉に話かけている。それに答える綱吉も笑顔だ。

「(邪魔者は、退散しておこうっと)」

楽しそうに会話し始めたあの中に入り込めるほど、瑞穂は無粋ではない。野球部で散々トンボがけをやっている山本がいる事だし、綱吉もきっと大丈夫。今日は早めにバイトに行くことにしよう。

芽生え始めた友情を眺めながら、瑞穂はそさくさとその場を立ち去った。






_この時、たとえ2人の会話を邪魔しても、バイトに遅れてしまうのも構わず手伝えばよかったと、瑞穂は翌朝後悔することになる。



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