6−2


返答次第では撃つ。銃を構えたリボーンに、綱吉はゴクリと唾を飲み込んだ。これは、冗談などではなく本気だとまだ短い付き合いであるものの知っている。緊張感がその場に漂った。

だが、瑞穂は銃を見ても臆することなく口を開いた。

「...ボンゴレ“ファミリー”てことは、家族なんだよね」

「ああ、そうだな」

マフィアの多くは、自らをファミリーと名乗る。そのファミリーに入るということは、家族の一員になるということでもあると、遠い昔に「誰か」から教わった。

だから、瑞穂はリボーンからの誘いを受け入れる訳にはいかない。

「誘いは嬉しいよ。沢田君もいい人だし、そんな沢田君がボスならきっと楽しいだろうなって」

「なら、どうしてだ?」

「...心に決めた人がいるから、かな。私は、あの人達だけが家族だと思ってるから」

「...それは、もしかしてさっき言ってた奴のことか」

「...うん、そうだね。だから、浮気なんてしたら怒られちゃう」

あの人達は、そんなことで怒らないだろうけど。むしろ、私に家族が増えたと知ったら泣いて喜ぶ様子が目に浮かぶ。でも、それは瑞穂が許さなかった。まだ再開すらできていないのに、あの2人以外と“ファミリー”なんて堂々と名乗れない。それは、あの人もきっと怒る。

「自分の本当の家族には、誠実に接しろ」

大丈夫、ちゃんと思い出したよ。

「そうか、なら仕方ないな」

リボーンはそっと銃をおろした。それを見た綱吉は、ほっと安心したように息を吐いた。瑞穂とリボーンが一体何について話していたのかは分からない。でもとりあえず瑞穂がボンゴレに入ることは免れたようだ。

「それじゃあ、私、こっちだからここでバイバイ」

「あ、うん。また明日」

曲がり角で別れた瑞穂_確かあの方面は高級住宅地だったから、噂は本当だったらしい。でも、瑞穂とリボーンが言っていた“家族”はそこにいない気がして、綱吉は首を傾げた。どうしてこんなこと思ったんたんだろう、と。







_綱吉達が校長室から出てくる前のこと。リボーンの元を訪ねる一人の姿があった。

「リボーン君、さっき聞き忘れてたんだけど!」

急いで来たのか、彼女の息は荒れている。

「長月徹って人、知ってる?」

_どうして彼女が彼のことを知っている。知る人ぞ知る、その人物の存在を。


真っ直ぐにこちらを見つめる彼女。だが、リボーンは偽りの言葉を声に出したのだった。




彼の存在は、そう簡単に教えるわけにいかない。



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