5−5


「...は?」

呆気に取られた表情の瑞穂。どうしてそこで彼の名前が出てくるのか、という心の声が聞こえてくる。だがそれに構わず、リボーンは畳み掛けるようにまた瑞穂に問うた。

「お前、父親が何をやっているか知っているか」

途端、表情が歪んだ彼女。当たりか、とリボーンは次の言葉を待った。だが、彼女が吐いた言葉は完全に想定外だった。

「父親?あんなやつ、父親だと思いたくないわよ」

憎々しげに吐かれた言葉は、本当に彼をよく思っていないようだった。

「今はイタリアに行っていることしか知らないけど、それがどうかしたの?」

彼が憎いと言わんばかりに吐かれた言葉。確か彼女は、普段は明るくあまり怒らないとも綱吉から聞いていたが...

これは、彼女の地雷を踏んでしまったかもしれない。

リボーンは心の中で反省した。これでは、情報を聞き出すことも難しい。

だが、これで分かったこともある。リボーンは今の状況を整理した。瑞穂が父親である和田原修治のことをよく思っていないことは表情と先程の言葉から明らかである。歴戦の殺し屋であるリボーンに誤魔化しをいれるなど、いくら彼女がなんでもできるからといってもできるはずがない。

どうして死ぬ気の炎を知っているのか。まだその謎は明らかになっていないものの、瑞穂は完全にシロだと確信した彼がする行動はただひとつ。

_和田原瑞穂を、ファミリーの一員にする。上手くいけば、彼女を使って、和田原修治の本性を引きずり出せるかもしれない。

もう少し様子見をするつもりだったリボーンだが、今日の理科の授業を見て予定より速く瑞穂に接触することを決めた。

彼女の頭脳は、味方になる分には頼もしいが、敵に回せば厄介なものになりうる。それは、先程少ない情報でボンゴレがマフィアであること、綱吉がその次期10代目だと導き出したところからも見てとれた。

彼女に少しでも不穏な動きがあれば今のうちに始末する。ボンゴレにとって、危険である若い芽は早く刈り取るつもりだったが、そうではないなら話は別だ。

「で、リボーン君は、私から何を聞きたいの」

奴のこと、答えられることあんまりないけど。怒りながらも、一応は協力してくれる姿勢も見せる彼女に、リボーンは口角を少しだけあげた。

「嫌なら話さなくていい。悪かったな、無神経なこと言って」

「別にいいよ。私も子供相手に大人げなかったし」

ふん、とそっぽを向く彼女は年相応だった。



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