4−2


昼休憩、瑞穂は職員室まで向かっていた。先程、教室を訪れた理科の根津先生に呼び出されたからだ。東大卒だという彼だが、瑞穂は正直疑っていた。単に、根津が同大学の先輩だったかもしれないという事実が嫌だということもあるが。生徒から嫌われている根津だが、瑞穂も同様に彼のことを嫌っていた。

「(あー、めんどくさい)」

いっそのことサボってしまおうか。欠伸をしながら、瑞穂が廊下を歩いている時だった。

「(...何この音?爆音?)」

外から、ドンドンと爆弾が鳴ったような音がした。幻聴かと思ったが、続いて聞こえた音に、気の所為などではないと思い知らされる。

ここは中学校、紛争地帯などではない。一体全体、どうなっているのだと瑞穂は窓の外を見た。窓からは中庭が見える。

そこにいたのは、沢田綱吉に向かって爆弾のようなものを投げる転入生_獄寺隼人の姿だった。

「何やってんの、アイツ!」

獄寺が投げたものは、地面に落下すると大きな音と爆風を発生させていた。綱吉は逃げるしかないが、逃げている先は確か行き止まりだ。このままでは、爆弾がもろに当たってしまう。

いてもたってもいられず、瑞穂は窓に足を引っ掛けると、上靴のまま中庭に降り立った。間に合うかはさておき、朝のことといい、今のことといい、獄寺の綱吉に対する態度に瑞穂は腹立っていた。

力は振るうのではなく、誰かを守るためにある。かつての「父親」は確かにそう言っていた。獄寺の行動は、ただ何もしていない一般人を傷付ける行為だ。流石にこればかりは許せなかった。

「沢田君!」

そう瑞穂が叫んだのと、銃声が鳴り響いたのはほぼ同時だった。

「え、」

瑞穂は銃声が鳴り響いた方、木の上を見た。一瞬、赤ん坊の姿が見えた気がしたが、瞬きするとその姿は既に消えていた。

それより、今は綱吉のことである。銃声が気の所為だったにしろ、今、獄寺から投げられた爆弾を受けてしまえばただではすまない。

そんな瑞穂の心配も杞憂に終わるのだが、


「リ・ボーン!!!」


_そこにいたのは、パンツ一丁の姿になり、額に橙色の炎を灯した知らない沢田綱吉の姿だった。

それからは本当にあっという間で。死ぬ気で消化活動!!!と叫んだ彼は、獄寺の投げた爆弾を次々と消化していく。


_何故か、瑞穂は彼の額に既視感を覚えた。彼が初めて活躍した日は学校を休んでいたにも関わらず。


私は、あの炎を見たことがある。



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