4−1


「イタリアに留学していた、転入生の獄寺隼人君だ」

翌日、学校に来てみれば転入生がクラスに来ていた。それもイタリアからの。

「ちょーかっこよくないー?」

「帰国子女よ!」

「(えー、絶対不良じゃん...)」

周りの女子は、新しいクラスメイトに胸を高鳴らせていたが、瑞穂は素直に喜べなかった。

確かに、獄寺という転入生の顔はとても整っており、日本人ばなれした銀髪と翠色の目は光に反射してキラキラと光っている。だが、制服を着崩した姿と、校則違反であるネックレスを首から何個も下げているところから見るに彼は絶対不良だ。目つきも厳しく、関わるものみな全て傷付けるタイプに見える。

「なあ、和田原もあんなのがタイプ?」

「え、うーん。私は、違うかな」

やっぱり、女子が騒いでいると気になるものなのか、山本が振り返って聞いてきた。瑞穂は、いくら顔が整っているからといって、彼を好きになることはないと断言できる。

他人を不用意に傷付けるような人物が、瑞穂の最も苦手とするタイプだった。人を見た目で判断してはいけないと思うが、長年培った観察眼は外れることはない。読み通り不良だった彼は、ずんずんと先生の指示も聞かず机の合間を縫って歩いていき、沢田綱吉の机を思いきり蹴りあげた。

「ほら、やっぱり不良だったし」

怖がる男子達の様子とは違って、女子は「そんなところもかっこいい」と新しい転入生のファンクラブを早速作ろうと盛り上がっている。女子とは現金な生き物で、強かである。いつの時代でも変わらない女子達に、瑞穂は呆れを通り越して尊敬した。たくましくて何より。

「(それにしても、イタリアかー)」

転入生が来たというイタリア。最近、奴がそこの会社と協力提携を結んだそうで、今はほとんど毎日をイタリアで過ごしているらしい。

この間、日本に戻ってきたのは本当に偶然だったらしい。そんな時にあれが重なるとは、運がついていないとしか言い様がなかった。

イタリアには非がないが、今はあまり関わりたくない国である。そういえば、入院中に来ていたあの謎の紙。

「VONGOLA」_ボンゴレとはアサリなどの二枚貝を使ったイタリア料理のパスタ料理のこと。

あの後、「ボンゴレ イタリア料理店」と検索してみたが、一件もこれといったものがなく。その紙にかいてあった紋章も見つからず、謎は深まるばかりだった。

「(嫌な、予感がする)」

なんだか居心地が悪くて、瑞穂はモゾモゾと椅子を座り直した。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -