3−1


目が覚めたら病院だった。よく小説などではあるシチュエーションだが、まさか実際に体験するとは思わなかった。こちらとしては既にありえない体験をしているため、今更驚くべきことではないかもしれないが。

まだ痛む背中を気にしながら、瑞穂はゆっくりと体を起こした。近くに置いてあったデジタル式の時計を見てみれば、日付はあの日_風紀委員長と恐怖の鬼ごっこを繰り広げた日から3日後の日付を示しており、瑞穂の口からハハハと乾いた声が漏れた。いくらあの日、疲れていたとはいえ、3日間も昏睡していたとは、委員長、恐るべし。

ゆっくり辺りを見渡してみれば、ここが個室であることが分かる。そして、かなり高級な部屋であることも。見舞い客用の大きなソファとテーブルがおいてあったが部屋にはまだゆとりがあり、テーブルの上には何やら高級そうなお菓子が置いてあった。一目見ただけだと、ホテルの部屋のようにも思える。

ベッド脇のテーブルには、誰かが見舞いに来てくれたのか、『和田原へ』と書かれた封筒が置いてあった。中には、授業のプリントや来週に控えた球技大会のお知らせのプリント。瑞穂は球技大会に無理矢理参加させられることになっていたのだが、この怪我だとおそらく参加できないだろう。この点に関してだけ怪我に感謝する。この点だけだが。

封筒の中のプリントを出していくと、見慣れた筆跡で書かれた手紙が入っていた。前の席の男子からのその手紙には、「大丈夫か?」と瑞穂の体を心配する文面と野球ボールの絵。「元気になったら、今度バッティングセンター行こうな」と締めくくられた文面を見て、瑞穂はほんの微かに頬を緩ませた。山本らしい、でもおかけで荒んだ心が治まった気がする。やっぱり持つべくものは良い友、山本である。

その後も順調にプリントを出していき、全てのプリントを出したと確認のため封筒を逆さまにした時だった。



ハラハラと、一通の、名刺ほどの大きさの紙が舞い降りた。

「何これ...?」

手に取ってみると、それには、何かの紋章と、「VONGOLA」と書いてあった。

「ボンゴレって、何でパスタ?それにこの紋章って...」


「前」の家で見たことがあるような。駄目だ、全く思い出せない。

−でも、「前」の家で見たとしたらおそらく料理関係...ボンゴレだからおそらくどこかのイタリア料理店の紋章?

それにしては妙な胸騒ぎがすると瑞穂は眉を顰めた。何か大切なことを忘れているような、そんな感覚。



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