花子さんと手がかり
 そんなこんなでなまえに成仏の手伝いをすると言ったものの。綱吉はその道のプロでもない。むしろ、そういった類に遭遇すれば真っ先に逃げるタイプである。そんなわけで、早速手伝いは難航していた。当たり前と言えば当たり前である。そのせいで、最近気が散ってばかりでリボーンから蹴られる回数が増え、獄寺からは大袈裟に心配され、更にはあの山本からも大丈夫かと言われる始末。綱吉は頭を悩ませていた。

「あーあ、本当にどーしよー」

 放課後、一人教室で綱吉は机に突っ伏した。山本は部活で、獄寺も今日はダイナマイトの仕入れでイタリアに向かっていた(日本を発つ前日、物凄く申し訳なさそうな顔をされたが)。久しぶりの一人、やっときた平穏な放課後にいつもなら心躍らせるだろうが、今はそれどころではない。はぁ、と綱吉は溜め息をついた。

「手がかりっつてもなぁ...」

 綱吉は数日前、なまえと話したことを思い出していた。





「大体、手伝うって言っても何すればいいんだよ」

 綱吉は目の前にプカプカと浮かぶなまえに問いかけた。場所は例の三階女子トイレ。なまえはパチリと瞬きをすると申し訳なさそうに綱吉を見つめた。

「あー、そういえば言ってなかったけ?」
「そうだよ、何も言ってくれなかったじゃないか」
「あーごめんごめん。つい熱くなりすぎちゃって忘れてた...」

 なまえは謝ると、その場でくるりとまわり、地面に降り立った。もちろん足は透けているので、以前として浮いてみえるが。どこからか眼鏡を取り出したなまえは、スチャリとわざとらしく音をたててそれを付けた。

「せっかくだから、君には色々と知ってもらおう」

 はい、そこ座る!と地面をさされる。しかしここはトイレだ。座るのを躊躇った綱吉だが、座らなければどうにも始まらなそうなので大人しく座ることにした。

「それじゃあ、まずは私たち幽霊について話すね」

 なまえはゆっくりと話し出した。綱吉も集中して聞こうと身を乗り出す。

「私たち幽霊は、基本的には存在しないもの...普通、死んだら未練があろうがなかろうが、その人の魂は別の場所に行くのね」
「別の、場所?」
「そう、別の場所。そこで、魂は回収されて、新しい命へと生まれ変わる」

 死人と生者の関所みたいなもんかな、そこで一息つくとなまえはふぅーと息を吐いた。再び喋り出す。

「だから私は本来こうして存在するわけないんだけど、どうしてかここにいる。私だけじゃなくて、森山君も横山さんも。それの原因は、ぶっちゃけると正直よく分かんない」
「...え、分かんないの?」

 綱吉は思わず声をあげた。が、すぐなまえの声に遮られる。

「分かんない、でもある程度は推測できる。幽霊がこの世に留まる原因は色々あるけど、でも一番考えられる理由は、この世に未練がまだあるから」
「...未練?」
「そう、未練。未練が強い人ほど、現世に留まる確率が高い。だから、君にお願いしたいことは、私の未練...どうしてここに留まるのか何か手がかりを探してほしいの」





「未練、未練かぁ...」

 あの後、了解と返事をしたものの、今まで会ったことない人物の未練を探せと言われても困難な話である。特に、なまえは旧制服を着てきたことから、かなり昔の生徒だ。そんな彼女の情報が果たして現在の並中に残っているのか。

「でもやんないとなぁ...」

 またまた溜め息。道先はまだまだ遠い。


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