プロローグ
「若ー、若様ー」
関東平野のとある街、浮世絵町。
そこには人々に今も畏れられる「極道一家」があるという。
「あら、そんなところで…どうされました?」
「…」
「リクオ様!?おなか痛ですか!?ど、どうしましょ…うわっ!?」
若、そう呼ばれた少年奴良リクオは小学3年生の8歳。
リクオが広い庭の片隅でうずくまっているのを発見した彼のお世話係でもある雪女。
腹痛の類いかと心配し駆け寄ると、足元から木に向かって紐に引っ掛かり、まんまと吊るされてしまった。
「やった妖怪ゲットォ〜って雪女か!相変わらずドジだな〜」
『…何故!?』
まず何故目の前にあのリクオと雪女がいるのか…
何故奴良家の塀に座っているのか…。
疑問がありすぎて思わず叫んでしまった。
その次の瞬間、何故か私は意識がなくなった。
―…
私は中学を終え、医者と看護婦な両親に手伝いを要求されていたため、両親のいる病院に向かっていた。
ボランティアのようなこの活動は初めてではなく、最近はいろんなことを任されるようになった。
私は慣れた手つきで着替え、ナースステーションへ行くと、すぐ女の人に話しかけられた。
「みのりちゃん!来てくれたのね!!」
『瑞希さん』
「いつもどうり、桜井さんについて貰っていいかな?」
『はい』
ナースステーションで話しかけられた女の人―瑞希さんはここの看護婦さんで、私の両親の友達である。
桜井さんっていうのは、最近よく任される同い年の患者さん。
不思議な雰囲気の子で、陰陽師なんだとか。
この前式神の召喚方法を何故がみっちり叩き込まれた記憶がある。
『こんにちは!!』
なんやかんやで病室に到着した私は、いつものように明るい声で挨拶をした。
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