夢と京都と転校生

「そっそれで!!花開院さんはなんで浮世絵町に来たの!?」


そんな重苦しい雰囲気の中、リクオが気を効かせて話を花開院さんに振った。


そのリクオの様子を見て、カナちゃんが優しく微笑んだことに気が付いた私は、胸が痛みそっと視線を伏せた。


「うちは…一族に試験として遣わされたんです。
より多くの妖怪を封じ、陰陽道の頂点に立つ花開院家の頭主を継ぐんです!!」


ゆらちゃんは嬉しそうに言った。

そんなゆらちゃんと対象的に、リクオはビクッと反応し、顔を青くさせた。

その様子に私は苦笑をこぼして再びゆらちゃんを見た。


「この町…浮世絵町はたびたび怪異におそわれると有名な街…うわさでは妖怪の主が住む街とすら言われているんです…だから、試験には丁度いいと…」


「…」


ゆらちゃんの言葉にリクオは顔を青くするばかり。

私はそっとリクオの肩に手をおいた。

リクオは涙目で私を振り返った。

その様子が子犬のようだと思ったのは内緒である。


「んな…!?妖怪を…?な…なんだって…」


「す…すごいぞ!!プロだ!プロが来たんだ、ボクの…この清十字団に!!」


リクオとは真逆の反応をする清継くん。

清継くんは何を思ったかおもむろにゆらちゃんの手をとった。


「ぜひぜひ協力してくれないか!!ボクも…ある妖怪を探していたんだ!!」


「ある…妖怪?」


「そう!!」


頭にハテナを浮かべるゆらちゃんに、清継くんは興奮が納まらないようすで拳を握りしめて力説する。


「そのお方達は…月夜をかけめぐる闇の支配者…そしてもう1人は月夜に浮かぶ白銀の狐姿…!!
もう一度…ボクは彼らと会わねばならない!!」


『あはは…』


白銀の夜叉って…などと思いながら取り合えず苦笑した。

そんな私に対しゆらちゃんは驚いた様子で呟く。


「!!…まさか…百鬼夜行を率いる者と…この世界唯一無二の白狐…?」


「そう…おそらくは彼こそが…」


「それは一体何処で?」


「妖怪の主!」


…見事に会話が噛み合っていない。

というか清継くんは人の話聞こうよ…

っと内心突っ込みを入れながら見守る私。

清継くんはキラキラした目でゆらちゃんの手を掴んだ。


「一緒に探そう!!妖怪の主と唯一無二の白狐を!!清十字怪奇探偵団ここに始動!」


と高らかに宣言する清継くん。


…まさか私も入ってんのかな。


私は苦笑するしかなかった。

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