諦めきれない(瀧新)
2014/07/21 10:39


「え、どうして」

瀧川は唖然とした。
突然、新力が自分の事を拒絶したからだった。

「どうして、新さん…」
「……」

新力は何も言おうとせず、抱こうとする瀧川を制止する手の力を緩めない。


…これまで、二人は何回も夜を共にした。
瀧川から求めた夜もあれば、新力から求めた夜もある。
言わば、相思相愛。
そんな関係と、違いに感じ取っていたに違いない。

それがなぜ突然。こんなことになってしまったのか。
瀧川には、全く見当がつかず、ただただ、新力の顔色をうかがうばかりだった。


「あ、あの…新さん…」
「…は、はい。」
「何か、気に障る事を、してしまいましたか…?」
「…。」

なにも応じず俯くばかりの対応に、瀧川はいよいよ弱気になった。声が震えてしまう。気を抜いたら、涙が出てしまいそうだった。


「…私の事、…その、き、嫌いに…なって……?」


一所懸命に声を出し、そう聞いた。
すると、新力は顔をあげ初めて


「違い、ます」

そう返事をした。
見れば新力の方こそ、涙を目に浮かべているではないか。

「…っ」
「し、新さん…?」

「…。逆、です…」
「え?」
「嫌いどころか、私は、貴方のことが…」
「え、じゃ、じゃあ」

拒絶することなんてないじゃないか。瀧川がそう言おうとするより先に、新力は言った。

「それがたまらなく恐い、から…っ」

「こ、恐い?」
「貴方は他の二人よりも、一番優しい。私は…貴方の優しさが、とても、気持ち良くて……ずっと、甘えてたくなってしまうんです。」
「…。」
「…もし、このままずっと、貴方の優しさに甘えていたら……私は、その、上手くは言えないけど……私は…駄目に、なってしまうんじゃ、ないかと…」
「新さん…」
「私は、貴方の事が、本当に好きになってしまった。だからこそ、そんな、駄目な私なんて、見せたく、なくて…ッ、、…っ」

新はボロボロ泣きながら、そう訴えた。
瀧川を制止していた手は、いつの間にか瀧川のスーツをギュッとしがみつくように掴んでいた。


瀧川は、相思相愛ということを確認できて嬉しかった半面、言葉にできない悲しさを覚えた。
好きだからこそ、離れたい。
そんな気持ちがあることを、瀧川はこの時初めて知ったのだ。


「…わかりました。」

瀧川は、泣く新力をぎゅっと抱きしめ

「これで、最後にしましょう。」
そっ…と、離れた。




「あとは二人に、任せるとしますよ。」

そう微笑み、新力を置いて部屋を出た。






「…。」

自室に戻った瀧川はソファに沈み暫く沈黙を続け、そして、独り言のようにぽつりと呟いた。


「諦めるなんて、無理に決まってるじゃないか…ッ」


握る拳に、涙が滴った。



fin



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