闇ヲ、シル(赤影)
2014/06/16 23:59


爬虫類ものが苦手な方は注意を。
______



“お前は優し過ぎる”

そう、言われた。

“闇を知らない”

そうも、言われた。


“まずは闇を知ることだ。”


どうしたら…いいの?




闇ときいて浮かぶのは夜だった。
安直かな…そうおもいつつ、ぼくは夜の森に入った。

「………寒い」

月の青い光。ざあと風が木々の間を通る音。
昼間稽古をしている場所と同じとは思えないくらい、怖かった。

「…。」

でも、この恐怖が闇への手がかりかもしれない。
僕はそう思い、さらに奥へと足を進めた。



「…こんな社があったんだ…」

森の奥にひっそりと建っていた。師匠からもこんな所に社があるとは聞いたことがなかった。

ガタガタの引き戸を開けると中はボロボロでかび臭く、光も殆ど差し込んでいなくて暗かった。

「…。」

ゾクリと背筋に寒気が走ったけれど、僕は中へと、ゆっくり入っていった。
…と、その時だった。


シュルシュル

前の方で何かが床を這う音がした。咄嗟に身構えるも、這う物は僕に飛び掛かってきた。

「痛っ…!」

腕に噛み付かれた。見るとそれは蛇だった。
ただの蛇ではなくて、尾の方にも顔がある不気味なもの。しかも一匹じゃない。足元にも何匹かいる。

「う…ぅ…」

ふら、ふら。どたんっ。
蛇の毒でその場に倒れてしまった。
ああ、死んじゃう。死んじゃうよ。

僕はとても怖くなった。



―…おぬしは…


朦朧とする意識に誰かが語りかける。

―…やみをほっするか

僕は心の中で頷いた。

―ならばおしえてやる
―われにみをあずけるがいい

何を意味した言葉なのかよく分からなかった。
ただ、それで闇を知れる、なら


こくん


僕は頷いた。
すると、さっきの蛇が僕に接吻をし、足の間へと、ゆっくり入っていった。



――――



差し込む朝日で目を覚ますと、そこには何もなく、何もいなくて、僕の身体も何ともなかった。

「…。」

でも、僕の“内”は変わっていた。
何か、冷たいものが、体中を流れている感覚。


「…。帰らなくちゃ…。今日も、修行がある。」

引き戸を開け外に出た。

「ん…」

森は朝日に照らされ、木々の葉が煌めいていた。



「…やだな。」

そんな言葉がポツリと出た。


“まずは闇を知ることだ”

師匠の言葉通り、いや、それ以上のことを僕は、遂げた。


朝日に照らされた世界に僕は嫌悪感を抱き

闇に包まれた夜が、とても恋しくなっていたのだった。



終。



prev | next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -