龍東×新力 〔性〕
2014/06/12 18:59
彼の近くにいれば家族と再会できるかもしれない。
きっかけは、そういう理由だった。
「だ、誰だ、君は?!は、離…ッ!!」
けれど、僕の今の行動には、そんなの全く関係がなかった。
彼の部屋の下に住み、幾年。
僕は彼の行動を、生活を、全て監視(み)てきた。
今、彼をこうして自分の部屋に連れ込みベッドに拘束できているのもその成果だ。
何時、何を、どこで、誰と。彼の動きで知らないことはない。
しかし、彼の方は真逆に、何もかも分からない、といった顔をしてる。
「ふッ、…ぐ…ッ」
呻き僕を睨みつける。
ああ、いつもは悩ましげな顔だけど、こういう顔もできるんだ?そう感心した。猿轡から滴る唾液が堪らない。
「新力」
「っ!?」
「…驚きますよね。知らない男が、自分の名前を知ってるだなんて。」
あはは。でも名前だけじゃないんですよ?笑いながら僕は彼の上に跨がった。
「貴方が食べてるもの、使ってる日用品、出かける場所、僕は全部知ってるんです。」
「…!!??」
彼は、途端にみるみる青ざめていった。睨みつける目から、恐れ慄く目に変わっていった。
「どうしてだと思います?…分からない?」
“家族と再会するため”
“いや、ちがう。”
「貴方が、とても気になる人だからですよ。」
僕は彼の腹に跨がった。
「最初は、もっと別の目的があったんですけど。それはもう、半ばついでみたいになってますね。」
一方的に話しながら、彼のシャツのボタンを外していく。下着を捲り上げると、彼の顔は一気に紅潮した。
「んっ…んぅっ…!」
恥ずかしいのだろう。彼は拘束されているにも関わらず、身じろぎ逃げようとする。
「はは、無駄ですって。あんまり暴れると、痕になっちゃいますよ?」
僕は笑い捨てた。彼くらいの力じゃ、この拘束は解けやしないのだ。
「おじさんが恥じらう姿って案外可愛いんですね。もっと見せてくれませんか?」
彼の顔色を見るのも待たず、僕は彼の胸を舐めはじめた。
「―!!!」
ビクンッ
彼は大きく反応した。
「まだお風呂の時間じゃありませんでしたよね?ふふ、これが貴方の味なんだ?」
「ふっ…んぅっ…!」
「あはは、可愛い。恥ずかしがるほど汗ばんで、体熱くなって。肌が吸い付いてくるようですよ。」
「んん…んっ、ぅ…」
舐め、撫で、吸う。それを繰り返していく内に、彼の反応から抵抗の色が減っていった。
もう良いだろう。僕は拘束を解き猿轡を外し、…唇を奪った。
「んっ…!ん…んん…」
彼は一瞬抵抗を示したもののすぐに受け入れた。
そういう経験が今まで無かった僕のキスは、彼からしたらどうやらもどかしかったようで。僕の背中に腕を回し、自ら舌を絡め、濃厚なキスを求めてきた。
「(ん…意外と好きなんだな、こういうこと)」
数分が経ちやっと唇が離れると、つうと唾液が伝った。
「は…ぁ…」
恍惚とした目で見つめてくる。その視線がとても愛おしかった。
「そんなによかったですか?僕とのキス」
「……。」
彼は肯定も否定もせず、ただ目を反らし紅潮していた。
「…ふふ、可愛いなぁ」
彼の顔を寄せ、見つめ合った。
「ほんと、もう、どうでもいいなぁ。家族は。」
「…き、君は、どうして私を…こんな……?」
「好きだからじゃ、理由になりません?」
「…」
「でも、自分でも不思議ですよ。どうしてこんなに貴方に惹かれるのか」
「…。…似てる…」
「え?」
「あ、いや…。な、なんでもない…なんでも…。」
「?何ですか、気になるじゃないですか。」
「ほんとに、なんでもな…ぅあっ」
「教えてくれないなら、いじめます」
―教えてくれてもやるつもりだったけれど。
心の中でそう呟きながら、僕はかれのスラックスに手をかけた。
fin
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