未来を失った男の話(C) 〔性〕
2014/05/21 23:38
三人子供が消え、
妻が去り、
家はとても広く、空しくなった。
掃除、炊事、洗濯…
何もやる気が起きない。
ゴミだけが溜まっていく。
“未来”を失うとこんなところまで疎かになるのかと、自分の情けなさに笑えてしまった。
そんな薄暗い生活にも慣れはじめた、ある日。
帰宅すると、リビングに知らない男が数人いた。
「誰だ?」…そういう間もなく、私は押し倒され…
犯された。
どうして家に知らない男達がいて、彼等によってこんな目に遭ったのか、全くもって理解できなかった。
だが、悲しくはなかった。
どうでもよかったのだ。
むしろ、久しぶりの“人との交わり”に、嬉しさのようなものを感じていた。
今思えば、私はあの時、おかしくなったのかもしれない。
それからの毎日、毎晩。
私は男に抱かれつづけた。
自ら、招き入れて。
かつての家族と暮らした部屋に、淫猥な音や声が響く。
皆で座り語らったソファに、男達と私の、淫らな汚れが染みを作る。
「あんた、最低な男だな。」
男は犯しながら私を詰る。
「ああ、そうだ。私は最低な夫で、父親だ。」
私は突かれ喘ぎながら応える。
「そんな私だから、君は、私を抱くんだろう?」
そう言うと男はにやりと笑い、一層強く私を突いた。
「ああ。たまらねぇよ。」
男の精を体内に受け、私はある種の愉悦を覚える。
―こんな私を子供はどう思うだろう?
「また明日な、江原先生。」
そう言って去る男を、事後の姿のまま私は見送る。
「ああ、待ってる。また全てを、忘れさせてくれ。」
見送る際、ふと鏡に映った私の顔は
とても、幸せそうだった。
fin
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