なかよし(トゥイシル)
2012/11/25 23:07
キリ番を踏まれた琴音さんへ!
リクエストの、「シルベスターとトゥイーティーが出てくるお話」です!
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追い掛けて、追い掛けられて、やいのやいの。
そんな日々を楽しいと思っていたのは、俺だけだったのか。
「もう頭きた!あんたみたいな悪い猫は要らない!!」
飼い主から怒鳴られ、俺は家から追い出された。
飲みかけだった牛乳も、大切にしてた魚も全部そのままに。もう二度と食べられない…全部きっと捨てられる。
…でもそんなものはこの際どうでも良い。
もう、トゥイーティーとふざけられない。それが一番ショックだった。
つまみ出された後、こっそりと家の中を覗いた。
「…あいつ、俺がいなくなってびっくりしてるかな…」
そんな、期待みたいなことを考えながら。
でも現実は残酷なもんで、トゥイーティーは何でもないようにくつろいでいた。
「あのやろぉぉ…」
心地良さそうな奴の顔を見ていたら、ムカつくような虚しいような、変な気持ちになった。
でも前みたいに飛び掛かれはしない。俺はとぼとぼと街へ繰り出した。
「…そういや、久しぶりだなぁ。街にくんの。」
埃っぽい乾いた空気に懐かしさを感じた。
煉瓦のボロ壁に寄り掛かりながら、街をぼんやり観察する。車が行き交う風景、雑踏、色んなものが真新しく思える。
なんで、来なくなったんだっけ?
「…あ」
そうか、そうだ、トゥイーティーが家に来たからだ。
奴を追いかけ回していたら、外への関心が全く無くなったんだった。
「…はは」
そんだけ楽しかったってわけか。
はは、馬鹿じゃねぇの、俺。
楽しんでたのは俺だけだったのに。
トゥイーティーは…俺のこと厄介しかおもってなかったのにさ…。
ポツ。ポツ。
頭に冷たい感触。見上げると雨が降り始めていた。
「あー…もう…」
空まで俺を邪険にすんのかよ。
次第に雨脚は激しくなっていくも、何故か体を動かし雨宿りをする気にはならなかった。
「なんかもう、どうでもいいな…」
壁にもたれ、目をつむる。
俺にとって…トゥイーティーは生きがいになってたのかもしれない。奴になんとも思われてないって分かっちゃった今、俺には何をする気も起きないから。
「死んじまっても、いいかもな…」
「誰が?」
隣から聞き覚えのある声がし飛び起きた。嘘だろ?目の前にトゥイーティーがいる。
「誰が死んじゃうの?」
「ト、トゥイーティ…なんでお前…」
「ねこたん、帰りが遅いから」
帰り…?
ま、まさかこいつ、分かってなかったのかよ…?!
「帰らねぇよ」
「え、どうして?」
「帰れねぇんだ。お前を虐めるからって、追い出されたからな。」
そう聞いた途端、奴の顔は寂しげになった。
「…?トゥイーティー?」
「やだ…」
「あ?…!」
雨で濡れた体に、トゥイーティーは抱き着いてきた。小さな手が、ぎゅっと俺の服を掴む。
「お前まで濡れちまうぞ…?」
「いいの…ねこたんと…離れたくないもん…」
トゥイーティーの声は微かに震えていた。
まるで、泣いてるみたいに。
…なんだ、そっか。
お前も…俺と同じ気持ちだったのか…。
「バーカ…小せぇのに無理すんじゃねぇって…」
そう言いながらも、俺はすごく嬉しくて…無意識にぎゅっと、抱きしめ返していた。
雨が少し、温かく感じた。
Fin
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