クレトゥイ
2012/11/20 23:16
学校で家族についての作文発表会があった後、トゥイークはマッケイ先生に呼び出されていた。
「…さようなら、先生」
30分くらいして、トゥイークはマッケイ先生の部屋から出て来た。暗い顔をしていた。
「…!ク、クレイグ」
俺を見るなりクレイグは嫌な顔をした。あからさまに。むかついたから中指を立ててやるとビクッと怯えた。
「な、なんだよっ!?;」
「別に。マッケイ先生に何言われたの?」
「…う、わかんない、よ…」
トゥイークは困惑してる。ほんとに先生の話を理解してなかったみたいだった。
「親のことは好きか?とか、死にたくなったことはない?とか、殺したいと思うことあるよね?とか…」
「…ふーん」
「なんでそんな事聞くのかな…」
「…」
俺は分かっていた。先生はこいつの親が…父親がキチガイだって思ってるんだ。
自分の息子をカフェイン中毒にして、コーヒーを餌にして息子にゲイみたいなことをさせる父親を。
「どうなんだ?」
「えっ?」
「殺したいとか思ったことあるの?」
率直に聞いてみた。
トゥイークは、虐待されてる自覚はあるのだろうか?
誰かに助けてほしいと、思ってるのだろうか?
「…ううん」
奴の答えはNOだった。
「…本当に?」
「うん…お、お父さんは…優しいもん…」
…キチガイはこいつじゃないのかと思った。冗談だろ?
「…」
力いっぱい中指を立て、奴を蹴った。
「痛っ!;何すんだよぉ!!」
「さっさと帰れキチガイ」
「な、なんでそんな事言うの!?;」
「うるせぇ」
もう一度蹴った。トゥイークは逃げるように下校した。
「…」
静まり返った廊下に、ぽつんと立ち尽くす。
俺は無性に苛々した。
『…ううん』
なんで否定したんだよ。
『お父さんは…優しいもん…』
なんで、酷いことされてるのに、父親を…そんな風に…。
悲しさと、嫉妬からかもしれない。
俺はどうしても、トゥイークに頼ってほしかった。
奴のヒーローに、なりたかった。
「うん」…そう言ってもらえてたら、俺は何だって出来たのに…。
「…鈍すぎんだよ、馬鹿」
トゥイークが去って行った方にもう一度中指を立て、俺も帰路についた。
帰り道は、涙で潤んで良く見えなかった。
Fin
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