忘れ形見
2018/02/24 11:20
ーあいつの残した物なんて興味はなかったよ。
ーけれどもソレは《あいつの子》だったから。
ー僕は無性に欲しかったんだよね。
子供の育て方? 知らない。
叱り方? テレビで見た。
褒め方? 本で読んだかな。
…そんな有様だ、当然他のやつらには大反対された。当たり前だよね。
でも僕は引き取った。
無理矢理に。
誰のため?
勿論、僕のため。
…と言っても、子供はすくすく育ってくれたよ。
なんとかなるものだね。
育つと同時に、自我も目覚めて行った。
「じぶん」「じぶんじゃないひと」…「おとうさん」
うん、僕は「おじさん」じゃなくて「おとうさん」になってしまった。
血の繋がりは全くないのにね。
顔だって全然違う。もっとそっくりな本物のお父さんがいるんだよ?そう、言ってあげたくなったよね。
「おとうさん」
そう言われる度、ぼくはなんとも言えない気持ちになった。
…。そう。本当に似てきたんだ。
何もかもが。
唯一違うといえば、僕への感情。
“懐いていて、従順”
瓜二つの容姿で《あいつ》と全く違う態度を僕に見せることが、
僕を狂わせていった、たったひとつの理由。
3回目の誕生日を迎えた夜。
僕は《あいつの子》を凌辱した。
自ら引き取り育てた小さい子を。
「俺は最低だな。なぁ?ダフィー。」
懺悔の気持ちは微塵もない。
あるのは物欲が満たされた、充足感だけだ。
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