記録更新中@



永きにわたって続いていた戦争自体が過去のものとなり、忙しなかった二世界間の関係も大規模な復興も一旦は落ち着きを取り戻していた。
終戦直後は燻るものが残っているだろうが、それをぶつけてしまうとまた逆戻りしてしまうと考え、互いに同意の上、門での行き来を事実上禁止していた。
しかし、ようやく落ち着きを取り戻したことで、また徐々に二世界間での交流を、という話も出始めていた。

だから、と言ってはなんだが、今の子供たちは戦の頃を話の中でしか知らない。
あの凄惨な光景が過去のものとなるのは喜ばしいことであり、今この時が"戦前"にならないようにすることが戦を許してきた者たちの務めだろう。


「まおうさまー!すごいものみつけたのー!」
スライム、フェアリー、ゴーストの子供たちが何かを抱えて興奮冷めやらぬまま魔王の元へやってくる。
魔王は子供たちが持ってきた物を見て、顔を強ばらせるが、幸いにも魔王の表情の変化に子供たちは気付いていない。
「そ、れは、どうしたのだ」
子供たちが持ってきたのは、高さ1mほどのロボットだった。
丸みを帯びた2頭身ほどの白いフォルム。
ところどころ錆び、泥で汚れているが表面上は大破しているようには見えない。
魔王は自身の声が震えるのを必死で抑え込む。
幼い頃の記憶がちらつく。
帰ってこなかった同族の顔、憔悴しきった父親の顔。
「あのね、もりであそんでたらつちにうもれてたのをゴーストがみつけたの」
興奮気味のフェアリーの勢いにゴーストが少し照れたように頭をかく。
「でもこわれてるみたいで、うごかないんだ。まおうさま、このこ、なおせないかな?」
スライムが遠慮がちに告げた言葉に、魔王もさすがにぎょっとし、言葉に詰まる。
その沈黙を怒りと捉えたのだろうか、3人は慌てた様子でしどろもどろになりながらも直して欲しい理由を伝える。
「あ、あのね。このこ、むかしのせんそうでつかわれてたものなんでしょ?がっこうでならったの」
「…直して、どうする?」
「このこ、せんそうでがんばったのに、ずっとくらいところでひとりだったんだよ。だから、こんどはぼくたちがともだちになっていっしょにあそんであげるんだ」
魔王はその言葉にハッとする。
口では二世界間の平和と言いながら、どこかで人間界を忌避していたことに気付く。
周囲は仕方がないと慰めを言うだろう。
だが、それでは本当の意味で良い方向には変わっていかないということもどこかで分かりきっている。
それに、これからを担っていくのは目の前にいる子供たちなのだ。
「そうか…ならば少しの間その子を預からせてもらおう。直るかどうかやってみなければ分からないが」
「うん!まおうさまありがとう!」
子供たちの顔が満面の笑みに染まる。
子供たちを家に帰らせた後、魔王は手元のロボットを一瞥するとある場所へ向かった。

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