つなぐ


テメェが隣にいるとか少し前まで考えられなかった。


それが変わったのは少しだけ気分がいい。



「オラ、背中出せ!」


「別に打ち身とかしてないから!」


「テメッせっかく気遣ってやっとんのに殴んな!」


「じゃあ服の中に手を入れないで!」


「うっっせェ!確認しとんじゃボケ!」



なぜ保健室で服を脱がせようとしたのかというと、怪我を確認するためなわけで…演習で個性無しの組手をした際に手加減ナシでブッ飛ばしたから。


端から見たら恋人にそんなことするなんてあり得ない、酷いと罵られても仕方ねェくらいだろう。だから心配で演習後ここに担ぎ込んだってのに。


回復ババアがおらず処置はまだできていない。ベッドに放り投げて服を脱がせるこの行為も褒められたモンじゃねぇのか…



「怪我は」


「してないってば。受け身ちゃんととったよ」


「……わりぃ」



演習で手を抜くなんざあり得ねぇ。だからコイツとの組手の時も手加減しなかった。


そもそも手加減なんかしなくとも俺と同等…いや、ムカつくことに俺以上だ。2分間で1セット。それを5本したが、内3本は時間が来る前に押さえつけられて、敗北に終わった。


4本目は2分間フルですることができたが、俺の疲労とコイツの疲労を比べれば一目瞭然。往なされて往なされて転かされて時間が来た。


5本目にようやく攻略が成功した。身長差と筋力の差を生かして浮かせて投げる。それくらいでしか勝てなかった。


ムキになってしまった自覚はある。



「あのさ、勝くんが私を投げ飛ばしたのはヒーローとして正解だと思うんだけど」


「あ?」


「ライオンはウサギを狩るのにも全力って言うじゃん」



お前がウサギのタマな訳ねぇだろと思いつつも口には出さす眉間にシワを寄せる。どちらかと言えば…昔から捕食者の側だったろ。


だが眼下で乱れている服は食べられる前のウサギのよう、か…


その捕食者を俺が食ったのか。


色んな意味で。



「というか、勝くんが私に勝ってるのって身長と体重と…デカイ態度じゃなかったっけ?」


「ンなわけねェだろ」


「他に何がある?」



このフレーズは前にも聞いた。昔からコイツには勝てないことが多かった。もしコイツが男で男女の身体能力の差を考えることもなければ普通に敗けていたかもしれない。


頭の良さであったり徳の高さであったり口の上手さであったり。


嗚呼、でも最近1つだけ勝てるモノが増えた。



「1個他にもあるわボケ」


「口の悪さとか?」


「ちっげぇわ!」




それは、お前が好きだという気持ち。



手を押さえつけ逃げないようにして耳元でそれを言ってやれば顔を赤くする。そういうところはウサギだと思わんこともねェ。


悔しそうに歪める口にキスをすれば更に赤く。


それを愛しいと思うのもここに入学した頃からすれば考えられなかっただろう。俺はコイツが嫌いだったし、コイツも俺が嫌いだった。表情をコロコロ変えさせるのもできなかった。


自然と口角が上がり愉しくなる。



「………他にあった。勝くんが勝ってること」


「ンだよ」


「性欲」



わかってンじゃねぇか?なァ、リードヒーロー

- 16 -
[*前] | [次#]

小説分岐

TOP
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -