つなぐ


君が隣に居ることが当たり前だった。


それが変わってしまったのは少し寂しい。



「いーず、一緒に帰ろー」


「あれ、かっちゃんはいいの?」


「あんな人知らないわ」



彼女がかっちゃんと一緒に帰らず、こうやって放課後に僕に声をかけたのはいつぶりだろう。2人が付き合ってからはかっちゃんが番犬よろしく見張っているから、こんな機会はなくなってしまった。



「演習で投げられたの怒ってるの?」


「違う違う。そっちじゃなくて手当てと称して脱がせようとしたのよあの人、信じられない」


「あ、はははは…心配だったんだよきっと」



幼馴染みの痴話喧嘩というか何というか…大人になっていく関係を見るのが恥ずかしい。


小さい頃は手を繋いで走ったりしてたんだけどなぁ。それも僕が無個性だって判明する直前までだったんだけどね。


彼女の隣は最近まで僕が占領していたはずだった。気づいたら彼女は少しずつ離れていって、代わりに僕の回りにはクラスメイトがいた。


女子と話すのも、前は彼女以外挙動不審だったのに…今は、まぁマシにはなったと思う。


離れたところで僕を視守ってくれているという実感はある。けど僕の世界を支えてくれた人が近くにいないのはやっぱり寂しい。


そういえばおでこ合わせでハグとかしなくなったなぁ。



「いず身長伸びたよね」


「え?そうかな…、あ!確かに目線が下だ!」


「男の子の成長期羨ましい」



そっか、隣に並んで歩く機会も減っちゃったからこんなに簡単な違いも気付かなかったんだ。悔しいな。

彼女の一番の理解者はずーっと僕が良かったのに。その席は埋まってしまったようだ。



「女子の方では高い方じゃないか。不満なの?」


「わっぱある方が強そう」


「わっぱって言い方かっちゃんみたい」


「げっ…改めよう」



一緒にる時間が長いとその人の性格が移ったりするのはよく聞く話だ。長年連れ添った夫婦の顔が似てくるのも同じ出来事を多く経験するかららしい。


僕が勝ちたい気持ちが大きいときに、自然と乱暴な言葉遣いになってしまうのはそういうことだ。だから彼女もきっとそういう原理。



「いずー、右手出して」


「どうして?」


「傷ついた手を取るのが私の役目だからかな?」



嗚呼、でも。



こうやって僕の手を取り微笑みかけて前を進むのは前と一緒だった。


かっちゃんに見つかったら怒られるかな?爆破されちゃうかもしれないからフルカウルで逃げよう。



生まれてからずっと傍にいる人。



隣じゃなくていいから、これからも僕を見ていてほしい。



「もちろんだよ?だって……私、いずのフォロワー第1号だからね」


「ちょっと!視るのは無しでしょ!?」


「そんなに眉間にシワ寄ってたら気になるんだもの」



リードヒーローって、ズルいよなぁ。

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